広背筋

広背筋は背中の表層の大きな筋肉です。深層には多裂筋や脊柱起立筋(長肋筋、最長筋)などの体幹を動かす筋肉があります。広背筋はどちらかというと体幹を保持する筋肉で作用が異なるのです。トレーニングを難しくするのはこの作用の違いだと考えられます。広背筋トレーニングは適切なポジショニングできっちりアプローチしていくことが大切です。

 

深部感覚

広背筋の起始停止

広背筋は、背部の表層下方にある三角形の広い大きな筋肉。
〔起始〕胸腰筋膜の浅葉、下位4〜8胸椎、全腰・仙椎の棘突起、肩甲骨の下角、腸骨稜、下位3〜4肋骨
〔付着〕上腕骨の小結節稜
〔作用〕下垂せる上腕を内側後方に引く・上腕が上げられているときには、これを引き上げる

広背筋の作用

広背筋の作用は、肩関節内旋・内転・伸展。これは、お尻の後ろで両手を組むような作用です。トレーニングの方法は、ダンベルやバーベルなどの器具を用いるものや背中を意識して縮めるなど様々な方法があります。しかし、いっけん広背筋が発達しているように見えたとしてもトレーニングの際のポジション取りが難しく、十分に機能していないことがあります。不十分な骨格ポジションでは筋肉がフル稼働できないのです。

肩の動き

肩の動きは、胸郭〜鎖骨(胸鎖関節)、肩甲骨間の動きと、肩甲骨〜上腕骨間の動きの両方からなります。たとえば上肢を挙上する際に前者が約1/3、後者が約2/3の可動を受けもちます。運動方向は、屈曲(前方挙上)、伸展(後方挙上)、外転(側方挙上)、内転、内旋および外旋があります。

肩関節を動かす筋肉

屈曲(前方挙上):三角筋、上腕二頭筋、大胸筋、烏口腕筋、前鋸筋
伸展(後方挙上):大円筋、広背筋、上腕三頭筋長頭、三角筋
外転:三角筋、棘上筋、上腕二頭筋長頭、(前鋸筋、僧帽筋)
内転:大胸筋、上腕三頭筋長頭、大円筋、広背筋、上腕二頭筋短頭、三角筋
外旋:棘下筋、小円筋、三角筋、(僧帽筋、大・小菱形筋)
内旋:肩甲下筋、大胸筋、上腕二頭筋長頭、三角筋、大円筋、広背筋
外転挙上の際は前鋸筋、三角筋、上腕二頭筋長頭、棘上筋、僧帽筋

この他にも小胸筋、鎖骨下筋、胸鎖乳突筋などの協力筋があり、運動というのは多くの筋肉が協力しているのです。

広背筋を収縮させる

肩を動かすには多くの筋肉が協力し合います。その中でも広背筋の機能状況を知ることは大切です。起始停止の位置がズレていたとしたら骨格筋は十分に機能しません。これはどの筋肉でも同様のことがいえますが骨格ポジションを定位置にするのが重要なのです。広背筋は上肢運動のもとで体幹を覆う筋肉ですから広背筋がきちんと機能していれば骨格ポジションも定位置であり他の筋肉も良好ということがいえるのです。

 

“広背筋が機能する骨格ポジションをつくる”

  1. 足の指を含む足裏全体で接地し、重心ニュートラルにセッティング
  2. 上腕を垂直にし、肘関節を屈曲する
  3. 左右の肘頭で体幹を挟むように広背筋を収縮させる

深部感覚

アスリートは広背筋を収縮させることが苦手!?

競技の特性や個人差などで骨格ポジションは様々です。中には、左の広背筋は収縮できるが右の広背筋は収縮できないという左右差の著明な人もいます。それほど骨格ポジションの決定は難しいのです。しかし、偏った機能状況は怪我に発展する恐れがありますので注意が必要です。以下、チェック項目にひとつでも当てはまれば骨格ポジションが偏っていると考えていいでしょう。

上腕を垂直に保てない(脇が閉まらない)
広背筋の収縮に左右差がある
胸の詰まりがある
呼吸が浅い
肩の怪我を繰り返している

広背筋を回復させる

広背筋は腹圧(ポジショナル・パワー)の原動力です。つまり、動きの源を担う筋肉だといえます。左右差に気づいたら回復しましょう。

 

 

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