姿勢保持には種々の調整機構が関与します。アスリートに限らず、日常生活においてつまづいたときに転ばないように姿勢を立て直す反射をはじめ、高いパフォーマンスのためだけではなく身を守るためにも質の高い姿勢反射を備えておくことが大切です。
姿勢保持において重い頭の扱いがポイントになります。たとえば、緊張性頸反射の受容器は頚部の関節や靭帯にあります。頚部は頭を支えるのにも、受容器としても機能状況を良好にしておくことが大切です。しかし、頭痛、めまい、寝違い、むくみ、凝りなど頚部に症状や違和感をうったえる方が多く頚部の状況が良好とはいえません。質の高い姿勢反射を備えておくためにも、快適に日常生活を送るためにも、質の高いトレーニングを目指します。
▲日本人体解剖学第一巻(南山堂)著 金子丑之助
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
頭板状筋と頭半棘筋はボリュームのある筋肉で頚部後面を埋めている。
頚部後面に付着する筋肉で、まずは機能回復をしたい頭板状筋と頭半棘筋。
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
表層の筋肉から後頭下筋群、多裂筋のトレーニングへとすすめる。
深部感覚(固有感覚)の活性化を見据えて、頸椎の位置、関節運動の方向、骨格筋の役割分担をトレーニングします。
▲図解 四肢と脊椎の診かた(医歯薬出版株式会社)著 Stanley Hoppenfeld
▲図解 四肢と脊椎の診かた(医歯薬出版株式会社)著 Stanley Hoppenfeld
頭板状筋、頭半棘筋の回復を進め、深層の後頭下筋群へアプローチをめざす。
広頸筋、胸鎖乳突筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋、おとがい舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、前頭直筋、頚長筋、頭長筋、咬筋、側頭筋、内側・外側翼突筋etc
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
臨床で頚部前面の触察の際に注意すべきは頚神経叢、腕神経叢、総頸動脈、鎖骨下動静脈、外頸動脈、内頸静脈。
▲分冊解剖学アトラス 越智淳三=訳
舌骨を指標に前頚筋、椎前筋を確認する。椎前筋は甲状軟骨、気管をよけて神経叢、動静脈に注意すること。
▲分冊解剖学アトラス 越智淳三=訳
舌筋は舌外筋と舌内筋からなる。舌は咀嚼や吸飲を助け味覚や触覚のための感覚器をもち、言語構成に役立っている。
▲分冊解剖学アトラス 越智淳三=訳
顎関節は咀嚼器だといえる。摂取した食物を歯で咬み、粉砕する。これにより消化を助け、栄養をとることができる。咀嚼や話すときの顎関節は回転運動と滑走運動が起こる。睡眠中など受動的に口を開けるときには滑走運動が起こらない。
頚部前面の状態は、顔面神経麻痺、三叉神経痛、眼瞼下垂、頭痛、耳鳴り、顎関節痛、噛みあわせのズレ、眼精疲労、寝違い、五十肩、バランス感覚の低下など様々な症状に影響がある。
頭部、頚部、顎関節のアプローチは、特殊感覚、平衡感覚、深部感覚へのアプローチだといえる。スポーツ動作において備えておきたい基本的なバランス感覚だ。この感覚がうすいまま不安定な環境でバランストレーニングをしている様子をみかけるが、これではバランス感覚を養うというより不安定な状況でも頑張れる筋トレをしているようだ。故障の原因ばかりでなくパフォーマンスを低下させる原因になりかねないので注意が必要だ。
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