内転筋

脚を大きく開くと内転筋が突っ張る。自分は内転筋が硬いと思っているスポーツ選手も多いのではないでしょうか?実は股関節を外転すると内転筋が突っ張って痛いというのは生理学的に正常なことなのです。筋肉は収縮することで力を発揮します。外転筋が収縮し、拮抗筋である内転筋が伸張します。可動域の限界に達すると伸張反射といって伸張限界に達した筋肉は挫傷しないように元の位置に戻ろうと収縮します。無理に伸ばせばカラダは壊れてしまわないように痛みとして危険信号を送るのです。つまり、股関節を大きく外転するだけの収縮力が足りないということなのです。内転筋のトレーニングは、ストレッチ、内転筋力UPが一般的です。ですが、よく考えてみてください。外転筋力が足りないのにストレッチ?あるいは、外転筋力が足りないのに内転筋力UP?様々なトレーニングがごっちゃになっているようなので整理をしてみましょう。

内転筋の作用は股関節の内転、屈曲、外旋です

名称が内転筋だけに作用が「内転」オンリーになっていませんか?内転筋群は、恥骨筋、薄筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、小内転筋の集まりです。これだけの筋肉を備えているのにもかかわらず「内転」一方向では動きを固めてしまう恐れがあります。内転筋の作用は股関節の内転、屈曲、外旋です。特に股関節の立体的な動きを滑らかにするのには内転筋の「外旋」作用は欠かせません。静的なストレッチで伸張反射を鈍らせて伸ばしてしまうと内転筋を外旋収縮させることができなくなってしまう恐れがあるので注意が必要です。

 

深部感覚

 

内側大腿筋(内転筋)
内転筋群は、膝関節の伸筋と屈筋との間にあり、3層に区分される。

 

第1層

 

恥骨筋
〔起始・経過〕恥骨上枝、恥骨櫛、恥骨靭帯から起こり、股関節の内側を下る。
〔付着〕大腿骨の恥骨筋線〔小転子の下方で、粗線内・外側唇の中間部をほとんど垂直に走る)。
〔作用〕大腿を内転、かつ屈する。
〔神経支配〕閉鎖神経、大腿神経。
〔血管支配〕外陰部動脈、内側大腿回旋動脈、閉鎖動脈。

 

薄筋〔旧名:大腿薄筋〕
大腿の内側を走る細長い筋。
〔起始・経過〕恥骨結合の外側縁から起こり、大腿の内側を下り、その下半で腱となる。
〔付着〕脛骨の上縁で縫工筋付着部の後方につく。
〔作用〕大腿を内転し下腿を屈し、かつ内方にまわす。膝関節を伸ばすと下腿の位置を固定する。
〔神経支配〕閉鎖神経。
〔血管支配〕外陰部動脈、大腿深動脈、閉鎖動脈。
〔備考〕縫工筋、薄筋および半腱様筋の腱は、さらに大腿筋膜および下腿筋膜と癒合して鵞足をつくる。

 

長内転筋
三角形、扁平な長い筋。
〔起始・経過〕強い起始腱をもって恥骨結合前面と恥骨結節とにわたる三角形の面から起こり、外側下方に向かって拡がる。
〔付着〕大腿骨の粗線内側唇の中部1/3につく。
〔作用〕大腿を内転し、これを屈し、同時に外側方にまわす。
〔神経支配〕閉鎖神経。
異常:長内転筋は、往々血管に貫かれ、2部に分けられる。

 

第2層

 

短内転筋
恥骨筋および長内転筋に被われた扁平三角形の筋。
〔起始・経過〕恥骨結合と恥骨結節との間から起こり、外側下方に向かって拡がる。
〔付着〕大腿骨の粗線内側唇の上1/3。
〔作用〕大腿を内転、かつ屈し同時に外側方にまわす。
〔神経支配〕閉鎖神経。
〔血管支配〕大腿深動脈、外陰部動脈、閉鎖動脈。

 

第3層

 

大内転筋
内転筋のうち最も強大なもので、上内側から外側下方に向かって扇状に拡がる。
〔起始・経過〕坐骨下枝の前面、坐骨結節の下面から起こり、外側下方に向かう。
〔付着〕大腿骨の粗線の内側唇、小転子から内側上顆まで。
〔作用〕大腿を内転する。
〔神経支配〕閉鎖神経、またしばしば脛骨神経。

 

小内転筋
大内転筋の最上部とみなされる筋で、しばしばこれと分離しがたい。
〔起始〕坐骨下枝および恥骨下枝。
〔付着〕大腿骨の粗線内側唇の上端および殿筋粗面の傍ら。
〔作用〕大腿を内転し、これを屈しかつ外側方にまわす。
〔神経支配〕閉鎖神経の後枝。

 

引用日本人体解剖学第一巻医学博士金子丑之助著

内転筋の外旋力不足は180度開脚できる人に多い

実は180度開脚ができたとしても外旋で力を入れれない、股関節を動かすのが苦手、という人が多いのです。内転筋を外旋で収縮することができない人の特徴があります。

 

“開脚前屈をするとつま先、膝が内側を向いてしまう”

 

これは脚をキープする力が足りないということになります。先にも述べましたが筋肉は収縮をして力を発揮します。ストレッチで筋肉を伸ばしきった結果、筋肉を収縮させることが苦手になったといえます。

 

“太ももが内側に捻じれている”

 

運動神経は屈曲神経系路と伸展神経経路に大別できます。屈曲神経経路は「外旋-外転-屈曲」、伸展神経経路は「内旋-内転-伸展」が連動していると考えられます。内転筋を「内転」作用の一方向のみのアプローチや伸展神経経路ばかりに刺激を入れすぎると経路内の連動に問題が生じるのでしょう。屈曲神経経路が働いてない状態が大腿内旋、太ももが内側に捻じれる状態です。

 

“お尻がダブダブしている”

 

股関節の外旋は内転筋の他に腸腰筋や外旋六筋というお尻の筋肉の作用になります。特にお尻のえくぼの奥にある、梨状筋、上双子筋、下双子筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、大腿方形筋の深層外旋六筋を収縮することができない状態はお尻が力なくだぶついているのです。

 

内転筋を外旋で収縮

硬い人からするとやわらかい人がうらやましく見えますが、やわらかくしてしまった人にも悩みが多いのです。しかし、硬い人もやわらかい人も内転筋を回復させなければ問題を解決することができません。まずは、内転筋を外旋収縮することが大切です。

 

 

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