元気のひけつ「背筋を伸ばし腰痛予防」骨盤おこし

子供の頃から猫背気味。背筋を伸ばそうとしているのですが、なかなか直せません。意識して腰を反らせすぎると痛くなります。体の使い方を学ぼうと、骨盤おこしという講習会を見学しました。骨盤は体の姿勢を保つ、いわば「土台」。後ろに傾くと姿勢が悪くなり、腰にも負担がかかる。骨盤おこしとは、後ろへ傾いた骨盤を真っ直ぐ立てる方法のこと。骨盤を起こすと、背筋がピンと伸び、腰痛予防になるという。
 実際にやってみた。椅子に座る時や地面にあぐらをかく時、骨盤を前に傾けて、恥骨や太ももが地面やいすの座面にあたるように座る。そして顔を前に向けると、背中に力を入れなくても背筋がすっと伸びた。骨盤が後ろに傾いているときと比べるとお腹を折り曲げずに済むので、内臓を圧迫しないという。
 だが、普段気にしていない骨盤の位置を意識するのは難しい。骨盤おこしを教える、えにし治療院の中村考宏院長は「目印は坐骨結節を浮かせること」と話す。坐骨結節はおしりの後ろの方を触った時に骨の出っ張りを感じる部分だ。多くの筋肉や神経が通っている。
 例えば、椅子に座って上半身を前に傾けていくと、そこから坐骨結節が浮く。そこから前を向くよう上半身を起き上がらせる。このとき、腰だけで反らせないことがポイントだという。
 腰だけで反らすと逆に腰痛を引き起こすので注意。胸から背骨全体で上半身を引き上げる意識が必要だ。膝が腰より高いと骨盤が後ろに傾きやすいので、椅子が低い場合は座布団を敷くとやりやすい。
 とはいっても、体が硬いので上半身がまっすぐ起き上がらない。そこで、中村さんに家でも出来る遊びを紹介してもらった。カエルのようにしゃがんだ姿勢から腰を上げて、脇を縮めて両手で押しあう。重心を前に移動させる感覚が養われるという。
 骨盤おこしのもう1つの目的は股関節の可動域を広げることだ。股関節から動かせば腰から曲げた時に起きる痛みを和らげられる。股関節は体前面の足のつけ根と思われがちだが、英語では「ヒップジョイント」というようにお尻のつけ根にある。
 中村さんも「治療院の患者さんも股関節が硬くなっている。股関節から足を動かそうとすると歩くときに無駄な力がかからない」と話す。
 立つときは骨盤の幅より狭めず、足は逆ハの字にする。体重は親指やそのつけ根だけにかけず、小指側にも体重をかける。この形でまっすぐ歩くと外反母趾も避けられ、ヒップラインも上がってきれいな歩き方になるという。
 バスケットボールの練習に腰をひねらない動作を取り入れている防衛大学の入江史郎准教授は「骨盤をおこして股関節を動かせるようになると、日常生活でも、布団を押入れに入れるときや長い距離を歩く時、階段の上り下りといった様ざまな場面で違いが実感できるはず」と話している。

2010/09/25 朝日新聞 be on Saturday 「背筋を伸ばし腰痛予防、骨盤おこし」

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