無職・64歳 林金雄
私は運動が好きで、若いころはボクシングのリングに上がったこともあります。引退後も、ソフトボールやマラソンなどで、毎日のように汗を流してきました。そうして体を鍛えてきたおかげでしょう。五十を過ぎても体力の衰えなどみじんも感じることなく、気持ちも若いころのままでいたものです。ところが五年ほど前、愛犬との散歩中にふとした弾みで転倒。土手を転げ落ち、激しく左肩を打ってしまいました。激痛が走ったので、念のため整形外科に行ったところ、骨には異常はなく、炎症が起こっているだけとのことでした。が、ホッとしたのもつかの間、肩の痛みはいつまでたっても引きません。それどころか、日を追ってどんどんひどくなりました。左腕を上げようにも、肩から上には痛くてどうしても上げることができません。夜、寝る段になると、待っていたかのように痛みが激しくなります。ときには重だるいような、ときにはしびれるような疼痛が左肩から二の腕全体を襲い、なかなか寝付けませんでした。ようやく眠れても、痛みで何度も目が覚めます。この5年間は、毎晩その繰り返し。夜が怖くて、仕方がなかったほどです。他の病院でも診てもらいましたが、「骨には異常がありません。そのうちよくなるでしょう」と、どこも同じ診断でした。整体やカイロプラクティックにも行きました。しかし、治療家たちがもんでもさすっても、温めても鍼を刺しても、よくなる兆しは見えませんでした。
二〇〇六年の春先のことです。えにし治療院を訪れた私は、これまでとは違う説明を受けました。中村考宏先生は、それまでわからなかった左肩の痛みの原因を探り当て、人体模型などを使ってわかりやすく説明してくれたのです。先生によると、私の左肩の痛みは筋肉の使い方がアンバランスになっているためとか。「五十肩なうえ、痛みをかばって別の筋肉を使っているので、本来使うべき筋肉が弱っている。その無理な使い方が慢性的な炎症を引き起こしている」といいます。私はこの説明に納得し、先生が教えてくれた五十肩に効く「肩甲骨おとし」に取り組みました。肩甲骨おとしをやる回数は、とくに決めていません。やるのは、毎日5〜10分、調子のいいときには20分くらいでしょうか。私は前に突き出した腕の外側に、できるだけ力を入れるようにしています。こうすると、より確実に筋肉に刺激が伝わるのがわかるからです。先生を信頼し、とにかく三ヶ月は続けようと思っていましたが、効果は予想外に早く現れました。肩甲骨おとしを始めて一ヵ月後には、五年間も上がらなかった左腕が、何不自由なく上がるようになったのです。痛みもピタッとおさまり、夜も熟睡できるようになりました。五年間苦しんでいたのが、今ではまるで悪い夢でも見ていたような不思議な気持ちです。余談ですが、先日この経験を自分で発行しているミニコミ紙に紹介したところ、かなりの反響があり、そのうち何人かは先生を訪ねたようです。考えてみれば、私も先生に出会わなかったら、いまだにつらい思いをしていたにちがいありません。まさに、「えにし(縁)」あってこそ。微力ながら、今後も機会を見つけて、このすばらしい経験をほかの人にも伝えていきたいと思っています。
ひとことアドバイス
えにし治療院院長 中村考宏
林さんの場合、肩や腕の痛みの原因は、五年前の転倒より以前にあったと思われます。肩周辺の筋肉は、姿勢の悪さなどによって縮みます。この状態でケガをすると、縮みがさらに強くなり血液の循環が悪くなります。そして、痛みやしびれが起こるのです。肩甲骨おとしは筋肉を本来の軟らかさにし、血液の循環をよくするのです。林さんのように肩に痛みのある人は、様子を見ながら、無理しない範囲で行ってください。
(2007年2月号マキノ出版『安心』より)
夕刊フジに掲載されたときのイラストです。
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