自営業・74歳 山田政夫
私が「腰浮かし」を始めたそもそものきっかけは、股関節を悪くしたことでした。股関節に異常を感じたのは、昨年の春先です。当初は、歩き方がぎこちなくなった程度でした。しかし、まもなく、歩いているときはもちろん、じっとしていても太もものつけ根付近が、ズキンズキンと痛むようになりました。おかげで、杖なしでは歩けなくなったのです。いちばんつらかったのは、夜寝ている間にも、休みなく痛みが襲ってきたことです。30分から1時間おきに目が覚めてしまい、満足に寝れない日が続きました。整形外科での診断は、変形性股関節症。医師からは人工関節の手術をすすめられましたが、この年になって手術を受ける気には、どうしてもなれませんでした。思い悩んでいたときに、「安心」で中村考宏先生を知り、何か光明のようなものを感じました。先生の治療院は家からさほど遠くはないし、せめて寝ている間の痛みだけでも、らくになればと、おすがりすることにしたのです。先生の見立てでは、「股関節まわりの筋肉が衰えているのに加え、骨盤がかなり後に傾いている。それが股関節の動きを悪くし、痛みを強くしている」とのことでした。そのうえで、「まず、姿勢を改善し、筋肉強化と骨盤矯正のための体操を続けましょう。手術を考えるのは、それからでも遅くはありません」といわれたのです。骨盤の後傾については、私自身も思い当たることがありました。以前の勤め先では、30キロほどあるコピー用紙の箱を、ビルの1階から4階まで両手で抱えて運んでいました。腰をそったまま重いものを持って、一日に何往復もしていましたから、そのツケが回ってきたと思ったのです。
先生は体操を何種類か教えてくれましたが、なかでも「腰浮かし」は、私の症状にピッタリだとすすめてくれました。やり方は、とても簡単です。まず、イスに背筋を伸ばして浅く腰かけ、上体を前傾させながら、ゆっくり腰を少し浮かします。その姿勢を2〜3秒維持し、再び腰を下ろすことを繰り返すのです。毎日欠かさずやっていますが、とくにやる時間は決めていません。仕事の合間などに、ひまを見つけてはチョコチョコやっています。合わせれば、1日に40〜50回くらいになるでしょうか。腰浮かしをはじめて1ヶ月もすると、股関節の痛みが軽くなってきました。期待はしていましたが、思った以上にハッキリした改善効果だったので、驚くと同時にやる気がいっそうわいてきました。それから5ヶ月。いまでは近所に出かける程度なら、杖なしでも十分に歩けます。悩みの種だった就寝中の痛みも、近ごろはまったく出ません。おかげで朝までぐっすり眠れ、身も心もすっかり快調になりました。自分の足で歩けること、なんの屈託もなく眠れることの喜びを、あらためてかみしめています。それからもう一つ、腰浮かしはダイエットという、思わぬ副産物ももたらしてくれました。私は、身長が150センチそこそこで体重は60キロありました。背が低いうえに太っていることから、口の悪い友だちからは「セメント樽」などと呼ばれていました。ところが、腰浮かしをはじめて、気がつくと、3キロやせて57キロになっていたのです。おかげで、お腹がきつくてタンスの肥やしになっていたウエスト82センチのズボンも、スッとはけるようになりました。それまでは、ウエスト85センチのズボンを、きついのをがまんしてはいていたので、少なくともウエストは3センチ以上縮んだことになります。体型も、同じ樽は樽でも、以前よりはスマートな樽になったような気がします。実は、「メタボリックが心配だから、予防のためにも少し減量するように」と、以前から医師にもいわれていました。気になってはいても、なかなかやせられなかったので、こんなにうれしいことはありません。
ひとことコメント
えにし治療院院長 中村考宏
山田さんのように、変形性股関節症の方の多くは、骨盤が後に傾いているようです。骨盤が後傾した状態でイスに座ると、上半身の重み股関節が押しつぶされます。そのため、股関節に痛みが生じたり、股関節の変形が進むのでしょう。また、変形性股関節症の方は、下腹部やお尻、足のつけ根などに脂肪がたまりやすいようです。これは、骨盤の後傾による影響と、股関節の負担をへらすために、その周辺の筋肉が自然と動かしづらくなったためだと思われます。山田さんの下半身が引き締まり、体重が落ちたのは、骨盤の後傾が直り、筋肉がそれまでより大きく動くようになったためでしょう。腰浮かしは股関節の負担も軽減します。このままの調子でぜひ続けてください。
*腰浮かしは腰割りのこと(2008年4月号マキノ出版『安心』より)
夕刊フジに掲載されたときのイラストです。
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