テニス肘にならない接触/腕橈骨筋と長橈側手根伸筋
効率よく力が伝わる接触は、手と物が広い面積で必要にして十分な「圧・力」であること。「圧・力」は強すぎても弱すぎても不十分。動くときは必要にして十分な「摩擦力」が必要。
バットやラケットの扱いで手にマメができる場合は摩擦力が大きすぎる。そのため効率よく力が伝わっていないといえる。手の機能、動作を見直すことが必要。
手の接触は上腕と前腕のポジションにより接触面積、「圧・力」が変化する。必要にして十分な「摩擦力」で接触して動くためには手の繊細な機能構造を理解するとよい。
手の筋肉は細かな筋肉が多い。そのなかでも大きめの肘関節、手関節に作用する腕橈骨筋と長橈側手根伸筋の区別をする。
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
腕橈骨筋と長橈側手根伸筋は上腕骨と橈骨から起こる。
腕橈骨筋の停止部は、橈骨茎状突起に付着している。
長橈側手根伸筋の停止部は第2、3、5中手骨底に付着している。
▲日本人体解剖学第一巻(南山堂)著 金子丑之助
腕橈骨筋の起始部は上腕骨の外側縁1/3の付近、外側上腕筋間中隔。
長橈側手根伸筋の起始部は上腕骨の外側縁の1/4の領域、上腕骨の外側上顆、外側上腕筋間中隔。
▲日本人体解剖学第一巻(南山堂)著 金子丑之助
腕橈骨筋の作用は、肘関節の屈曲、前腕部の回外。
長橈側手根伸筋の作用は、手関節を背屈、橈屈。
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
腕橈骨筋の筋腹は幅広く薄い。
長橈側手根伸筋の筋腹はボリュームがある。
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
前腕の運動は腕橈関節の協力のもとに下橈尺関節と上橈尺関節の両関節でおこなわれる転換運動である。これらの転換運動は回内、回外と表現される回旋運動であって、橈骨頭関節窩から尺骨の茎状突起に至る軸のまわりでおこなわれる。
▲日本人体解剖学第一巻(南山堂)著 金子丑之助
肘関節の運動は、
屈曲:上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、円回内筋
伸展:上腕三頭筋
回外:回外筋、上腕二頭筋、長母指外転筋、長母指伸筋、腕橈骨筋、長橈側手根伸筋
回内:方形回内筋、円回内筋、橈側手根屈筋、長橈側手根伸筋、腕橈骨筋、長掌筋
など、多くの筋肉が協力する。
手関節の運動は、
背屈:総指伸筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、示指伸筋、小指伸筋
掌屈:浅指屈筋、深指屈筋、尺側手根屈筋、長母指屈筋、橈側手根屈筋、長母指外転筋
橈屈:長橈側手根伸筋、長母指外転筋、長母指伸筋、橈側手根屈筋、長母指屈筋
尺屈:尺側手根伸筋、尺側手根屈筋、総指伸筋、小指伸筋
など、多くの筋肉が協力する。
上腕骨外側上顆炎(テニスエルボウ)になる場合は、上腕内旋+前腕回内で肘関節が固定されて関節に遊びがない状態、なおかつグリップと手の接触圧が親指側に集中している状態にあり、効率よく力が伝わっていない。そのため腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋の起始部から筋腹にわたって負荷がかかっている。
上腕、前腕、しいては手関節がただちに次の動作へ移ることができるポジションで手と物(道具)が広い面積で必要にして十分な「圧・力」で効率よく力を伝えたい。
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