肩こり

肩こりは病気でない、体の位置感覚が鈍っているだけ

今は亡き心の師は、「肩こり」の治療をしなかった。慢性の「肩こり」「肩張り」で悩んでみえる患者さんには、患部に触れることなく、肘を落とすように、肩を挙げすぎないよう注意をほどこすだけだった。鍼灸の学生だった私はさっぱり意味がわからなかった。

ウイッキペディアによると、

「肩が凝る」という言葉は、夏目漱石による造語との説があり、さらに、それ以前はいわゆる肩こりの症状を特に指す用語は日本語になく、肩こりという言葉が生まれたことで、多くの日本人が肩の筋肉が固くなる症状について自覚するようになったとの言説がある。

医学大辞典(南山堂)によると、

肩こり:首すじ、首のつけ根から肩甲部の筋肉が重だるくはった感じとなり時に鈍痛を伴う状態で主観的にはきわめて不快な感覚で、時によると頭痛やはきけを合併する。年齢的には小児を除くあらゆる年齢層に認められるが、若干女性に多い。その原因としては種々のものがあるが、過労、不良姿勢、精神的緊張などを誘因として起こるもののほかに、変形性頸椎症、胸郭出口症候群、高血圧、眼精疲労、自律神経失調症、更年期障害などの疾患に伴って起こる二次性のものがある。その他誘因の全く見当たらない突発性ものがあるが、その多くは肩さがりなどの体型的な因子が関与していることが多い。その発症のメカニズムについてはなお明らかではないが、神経の過剰刺激、筋の過労、自律神経失調など引き金となり交感神経の過緊張が起こり、その結果として末梢血管の収縮、筋の血行障害、うっ血、浮腫が起こり、これらが独特の肩こり症状を引き起こすのではないかと推定される。〔治療〕原因、誘因の明らかなものについてはそれを除去するように努める。対症療法的には温浴、ホットパック、マッサージ、軽い体操などが有効である。必要に応じて筋弛緩剤を投与する。

日本整形外科医学会でも肩こりの予防と治療について一般向けにやさしく説明している 。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、「肩こり」の訴えが上位にランクインするほどだ。
肩こりは、病院、治療院の他、様々な民間療法でアプローチされているが、一向に減少しない。

なぜだろうか?

武術やヨーガの上級者には「肩こり」がない。
治療士の師匠にも「肩こり」がなかった。
師曰く、「肩こりは力み」だといった。
自分の身体と向き合うことのできる彼らは「肩こり」が何なのか知っているのだ。
肩こり症状を訴える人たちは自分の姿勢が悪いことを自覚している人が多い。
治療よりも姿勢を正すことが先決なのだと思う。
これだけ「肩こり」がビジネスになっている中でそれに気づくのは難しいのかもしれない。
治療士を志す者ならば真実に従ってほしい。

言葉は力を持っている。
欧米には「肩こり」という表現がないそうだ。
日本ではじめて夏目漱石が「肩が凝る」と表現したとしても、これだけ日本人にピッタリの表現は一流作家のなす技だろう。
その道の専門家の言葉には力がある。
医師が「肩こり症」と診断名をつければ、その患者は「肩こり症」という言葉に縛られ、「肩こり」の原因を緊張した「筋肉」だと説明すれば患者はその言葉に縛られる。
「筋肉」が原因になり「筋肉」を緩めるために理学療法を処方し、筋弛緩剤などの薬を処方する。
だが、真実と違っていれば「肩こり」から開放されることはなく言葉に縛られ続ける。

一流の指導者というのは、人を言葉で縛らない。

逆に患者側もこれだけ情報にあふれる時代だから、その情報を見抜くすべが必要だ。
何でもかんでも鵜呑みにしていては、この情報の餌食になるしかない。
デスクワーク=肩こり、という図式は成り立つようで、成り立たない。
デスクワーク=仕事、だから仕事(作業)をするポジションがあるはず....。
今の時代、職人はいなくなってしまったのだろうか。
私は職人気質の師に恵まれてよかった。

 

 

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