東京で構造動作トレーニングの講習会をはじめてから早いもので7年が経った。しかも、毎月欠かさず東京へ通っている。これも世話役を引き受けて下さっている中島章夫先生のおかげだ。中島先生は武術家の甲野善紀先生の技の普及に努めてみえる。その一方で構造動作トレーニングを研究して7年になる。2014年からは牧神の蹄という趾トレーニングブロックの練習会として「ひづめの会」を設立し中島先生に会長をお願いしている。もはや構造動作トレーニングとは切っても切れない関係だといえる。その中島先生が東京セミナーの始まりから2年間分のレポートを書いている(2008年07月23日〜2010年7月31日まで)のでせっかくだからこちらに添付しました。まずは最近の深部感覚のレポートからです。(中村考宏)
構造動作トレーニングの中村考宏先生の新刊『本当に動く体になる!エクササイズ革命「骨格ポジショニング」 』(学研パブリッシング)に「深部感覚トレーニング」が紹介されている。同書では「深部感覚を厚くするトレーニング」となっているが、構造動作トレーニングでは、「深部感覚クイックルーティーン」として知られるものである。深部感覚とは、皮膚と内臓の間で起こる感覚のことで、関節、筋、腱の動きの感覚がその基礎となる。これには四種類あるといわれ、それぞれ位置覚、運動覚、抵抗覚、重量覚という。これは文字をみれば分かるように、わたしたちの「からだの部位の位置」、「からだの運動の状態」、「からだに加わる抵抗」、「からだが受ける重さ」を感じる感覚のこと。つまりわたしたちが重力下で活動する際の、運動の状態を刻一刻と脳が把握するための感覚ということになる。深部感覚が鈍ると実際のからだの状態と、脳が把握しているからだの状態にずれが生じる。足を上げているつもりで躓くとか、家具に足の小指をぶつけるとか、人ごみでぶつかるとか。さらに持っている荷物がどのように空間に位置を占めているかの把握も鈍るので、荷物を人や物にぶつけたり、やがては他人の迷惑になることに気付かず、リュックを背負ったまま込んでいる電車に平然と乗ることになる。こういうことも深部感覚の鈍りであるとわたしは考えている。
さて、この構造動作の「深部感覚クイックルーティーン」だが、拙著『足指をにぎるだけで、腰とひざの痛みは消える!』(ベストセラーズ)では、足指トレーニングのひとつとして、「爪押し」と「すね立ち」を紹介させてもらった。そのため本の発売から、自分の稽古会やカルチャー教室で、このふたつをメインにやっているのだが、その効果には目をみはるものがある。具体的にいうと、本に書いたとおり、腰痛などの原因は姿勢のゆがみにあると考えられるが、まず足裏をきちんと接地させることがその前提条件である。最初に腰痛がある人もない人も、普通に立ってもらい、背後から両肩に軽く手の指を置いて、重力方向に押してみる。するとほとんどの人が腰椎のどこかで曲がってしまう。腰痛のある人に聞くとその曲がるところがいつも痛いのだと言う。つまり、本来は背骨全体で引き受けるはずの上半身の重さを、姿勢が悪い(後傾している)ために腰の一部で余分に受けてしまっているということだ。ということは今は痛くない人でも、その姿勢を続けていると腰痛になる可能性がある。これを「爪押し」をして、足指先の接地の感覚を濃くしてから行なうと、両肩への加重を背中全体が受けてくれて、まるでひとつひとつの背骨が均等に重さを引き受けてくれているようにカッチリして、腰痛の人も痛みがないというのだ。これは足指握りの実力が、まだ低い人、足指が少ししか曲げられない人でも効果が出るので、それがすごいことだと思う。もちろん歩いたりすると、実力のない人はまた重心が後傾していまうので、腰に負担のある姿勢に戻りやすいのだが、足指先の接地感覚が濃くなってくればけっこう楽になるだろう。
これは誰でも簡単に経験できることなので、わたしの稽古会か、深部感覚トレーニングの本家、中村考宏先生のセミナーに参加してみるといい。これは宣伝でもあるのだが、どういう方向に自分の姿勢が向かっていけばいいのかを、しっかり把握しておくことが将来の姿勢や健康に大きな差が生じてくると思うからだ。
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