第12回骨盤おこし東京セミナー。今回で二年目に突入した。めでたいことである。いつもパワー全開のえにし先生に感謝するばかりである。さて文章にまとめるのが難しいので、例によって気づいたことをメモしておく。
膝と足指の向きをそろえることは、脚をまっすぐ使うということである。膝の向きが足の親指側に向いていたり、内側に入ってしまっている場合がある。それは膝上を内側に、あるいは膝下を外側にひねって使っていることになる。足を股関節幅に開いて立つ。つま先を正面に向けず、逆ハの字になるようにする。両膝を曲げてゆく。正面から見たら膝がひし形になる。かかとは付けていないが、バレエのプリエみたい?するとつま先に重さがかかってくるが、それが足指のどこにかかるか確認する。骨盤おこし式では、足の中指に加重する向きに膝と足指の方向をそろえる。さてこうするのは「脚をまっすぐ使うため」であるが、そうすることにどういうメリットがあるのだろうか。試しに親指方向に体重がかかるように両膝を曲げてみる。するとある角度で膝の曲がりにストップがかかることがわかるだろう。次に中指方向でやってみる。膝は床に着くまで曲がっていくだろう。つまり親指側(内側)に膝が入っていると、動きにストップがかかり、中指側だと動き続けられるのである。このことは歩く、走るという動作のとき、ブレーキをかけつつ動くのか、かけずに動くのかという違いが出てくる。スポーツに限らず、日常動作でもからだへの負担と効率はずいぶん違ったものになるだろう。
膝が内に入ったままで、ジャンプすると膝に着地の時に膝に大きな負担があるということも想像できるだろう。しかも音を立てず、柔らかい膝に負担の少ない着地をするには、膝の向きだけでなく足の形がポイントとなる。足指先は軽く握った形にし、足指の腹(指紋のあるところと爪の間あたり)で接地する。軽く握った形状の足指を含めて土踏まずのアーチを形成するようにするのである。(念のために言っておくと、接地は足指の腹とかかとのみではなく、母指球から小指球にかけての足指の付け根や外側の縁も接地する。)いわゆる土踏まずのアーチに、指ひとつにつき3つの関節、それが5本で15個の関節がアーチを応援するわけだから、着地時のクッションの性能も強化されるわけだ。ジャンプの着地時には、この効果が如実にわかる。しかし実は日常の歩行のときも、足指を伸ばしたままの接地していれば、一歩ごとの衝撃があるのであって、たくさん歩いていれば指先を利かせた歩きと比べて膝などへの負担は大きく違ってくるだろう。
イスから立ち上がるときの注意点。左股関節を使うこと。その練習方法は、
力こぶを前にするというのは、背中を使えるようにするということだ。左腕の力こぶを前に向け構え、右手を左前方向に伸ばすと背中が利いてきて体幹部がしっかりとまとまる。股関節から立ち上がるには体幹部がまとまっていた方がスムースだ。左腕の構えが崩れると背中の力が抜けてしまい、重心が後ろに残ってしまう。
骨盤おこし式LSDの影響で、歩くのもゆっくりになってきた、とえにし先生が言う。骨盤おこしを続けているといつの間にか歩くのが早くなるのだが、えにし先生の場合「歩く」という動作の検討に入ったからではないかと思った。さて、その「歩く」だが、歩く 右足「1」で出し、左足「2、3」で出す感じだという。
つまり左足の方がゆっくりと出す感じらしい。しかし本当に「1」「2、3」のカウントで歩くと妙なことになってしまった(笑)。まあ心持ち左足がゆったりと歩くといい、ということだろうか。その理由は左股関節は強いので左を軸にした方がいいのだが、利き足の右足を軸足にしてしまっている人が多いから、だそうだ。わたしの感覚ではゆっくり「ひとおつ」「ふたあつ」と数えて、「ひ」で右足、「とおつ」で左足という感じ。同様に「ふ」で右足、「たあつ」で左足。実際には左の「と」、「た」のところは左右の切り替えのカウントなので、左足は「おつ」「あつ」で動く。このこととは別の話でわたしの感じなのだが、「左股関節」を利かせる歩きの工夫として、一歩目を左足から、というのを試みている。階段を上がるときも左足からにする。そして左を「1」、右を「2」とカウントしながら歩くと、「1」に気持ちが向くので、左主導で動きやすいようだ。
「骨盤おこし式ゆっくり走り(骨盤おこし式LSD)」のとき、力こぶを前に向けて腕を垂らし、前腕を肘から折って構える(手のひらが上)。ここから前腕のみを手のひらが内側を向くように返す。これを「腕橈(わんとう)関節の回内」と言うのだそうだ。力を抜いて走るのなら、手のひらを上にしたままブラブラと走るのでもいいのではないかと思っていたのだが、やはり腕橈関節から前腕を返し手のひらが内に向くことが大事らしい。理由は上腕二頭筋の力を抜くためだ。上腕二頭筋は前腕を屈伸させるだけでなく、回外させる働きをする。つまり「力こぶをつくる」とき、拳を肩に近づけて腕を曲げるだけでなく、拳を外側に向けると力こぶはより大きくなるということである。日本アームレスリング連盟会長の遠藤光男さんのサイトをみると、「上腕二頭筋トレーニング〜コンセントレーションカール」で「手首を外に反した状態のまま、腕を曲げる」とある。この「手首を外に反した状態」という動作が腕橈関節の回外になる。反対に力こぶを作った状態で、拳を内側に回して拳を前に向けるようにすると、前腕の筋肉が盛り上がる代わりに力こぶはゆるむ。力こぶが前方を向くように腕を垂らし、手のひらが上を向くように肘から前腕を上げた形だと、腕橈関節は回外の方向にある。そのため力こぶに力が入ってしまっている(この程度だと自分では力こぶに力を入れているとは思わないのだけどね)。そこで腕橈関節を回内して手のひらが内に向くようにすると、力こぶはもっとゆるむことがわかる。ここでさらに回内させると前腕の筋肉が緊張してしまうので、お化けみたいな手もリラックスしていないことになる。リラックスしているように見えるのにねえ。両手のひらが向かい合うぐらいに回内させて、上腕・前腕が一番リラックスするポジションを探してみるといい。というわけで、これまでもことあるごとにえにし先生が、「力こぶを前にして肘を回内させる」とセットで言っていたのには、腕をリラックスさせるという意味合いがあったのであった。
以下は中島章夫が理解する猫背と肩と胸の歴史。骨盤が起きているときは、胸は前方に位置し、肩は胸の後方、つまり背中側にぶらさがっている。骨盤が後傾すると、胸はその位置を保てず肩の領域に後退してくる。これは立位のバランスを保つためである。肩は胸にその位置をゆずるが、後退するのではなく、胸の上に乗り上げて居場所を確保する。このように骨盤後傾にともない、胸が肩の位置に浸食してきて、肩が胸の上に避難するのがいわゆる「猫背」である。そのため猫背を改善するためには、当然まず骨盤をおこすことから始めなければならぬ。次に胸を前に出して行くこと(胸椎の可動域を高めること)である。胸を出すには猫背の形成過程からみれば、まず肩を「今ある位置のまま」上方に上げ、胸を前方に追い出す。その後肩をそのまま下ろすと、胸の後方に落ちることになる。このことによって、左右肩甲骨の間には(胸椎が前に出るために)くぼみができる。腕は力こぶが前を向いた形で、背中側にぶら下がる。このときはじめて腕が腕として働くようになる。
早稲田大学オープンカレッジの講座を受講している女性が、お手製の布ぞうりを見せてくれた。古Tシャツ2枚ほどで作れるそうだ。そこで半分のサイズの足半(あしなか)をリクエストして作ってもらった。これは1枚でできる。時代考証家の名和弓雄先生の本から、足半についての記述を引用してみよう。
草履だと指先は外に出ないのかもしれないが、足半は指先が飛び出して地面に触れる。そのためわたしは草鞋を半分にしたものだと長いこと思っていたが、草履を半分にしたものだと書いてある。考えてみれば鼻緒しかないから草履ということかもしれない。同書によれば草鞋は足半よりあと、合戦の地域が広がり行軍距離が延びて、長距離の移動に耐える草鞋の登場となったそうだ。布ぞうりは部屋履きだからふつうは指が乗るサイズだろうが、布足半を作ってもらうにあたり、足指が出るようにしてもらった。その魂胆は、布でつくると厚みがあって縁もふっくらしているので、足指を握るのに具合がいいと思ったからである。そしてそれは「骨盤おこしトレーニング」必須の足指を握る鍛錬にするためである。出来上がってみると案の定、先っぽから飛び出た足指で足半の縁をぎゅっと握るといい感じである。いろいろな人に試してもらうと、足指を握るのが苦手な人でも縁を握るとけっこう握れることもわかった。さ らに足半の利点は、かかとの部分がないために、歩いていると自然に足指の付け根のMP関節に重心が乗ってくることもある。これは決してかかとを浮かせて歩 くということではなく、かかとを床につけて歩いていてもそうなる。かかとの部分に草履がないわけだから、つけば後ろ重心になりそうなものである。この理由は足指を握り込むと、足が自然に背屈しやすくなり、その結果重心が前にいき、そうなるとかかと部分がないためにかかとが浮き気味になって、ますますMP関節に体重が乗り込むためのように思う。これはどこで見せても評判がよく、欲しがる人がたくさん出てくる。わたしが作ってもらった人に、そんなに頼むわけにもいかないので、自分でやってみたいと思った。作り方を習って、欲しい人たちで集まり自分たちで作るのが正しい姿のような気がしてきたからだ。ところがその人が習ったのは東京ではないとのこと。この日記を読んだ方で、東京での講習会を知っている方がいたらぜひ教えてください。と は言っても師匠である甲野先生と違って、(そういう意味では手作りの会を主催している恩師、原始技術論の岩城正夫先生とも違って)不器用でもの作りに不向 きなわたしが、なぜか布足半は自分の手で作ってみようと思ってしまった。不思議なこともあるものだ。(結局作らないかもしれないけどw)そういえば「手作りの会」でも布ぞうり作りとかしているかもしれない。なんだかやっていそうな気がする。
骨盤おこしセミナーは「立位体前屈」や「股割り」、「ゆっくり走り」など、毎回テーマになるトレーニング素材がある。これらは特にテーマとして掲げられるわけではないが、なんとなく焦点となるのである。2009年8月22日、23日に開催された「第13回骨盤おこしセミナー」では、「足指を握る」がそうだった。
足指を握ることが重要なことは、以前から言われていたし、日記に書いたこともある。ただ今回はえにし先生がいくつか布の「足半(あしなか)」を作ってきたために、よりクローズアップされたのだろう。
足半はぞうりと違って足指が外に飛び出しているので、縁を足指で握ることができる。もちろん握らないでつっかけて履くこともできるわけだが、元々地面をしっかり掴むためにそうなっているので、足指先を鍛えるにはもってこいなのだ。しかもワラジと違って半分の大きさしかないので、かかとを地面につけていたとしても、足指の付け根に体重がかかりやすい利点がある。えにし先生の作った足半は、わたしが持っているものより厚みがある。それは芯に使っているのが、PPヒモではなく洗濯ロープのような太めのものだからだ。厚みがあると、縁をしっかり握れる。また自分の足指にあわせて縁の部分の幅を調整できるのは手作りゆえである。大きさが小振りなのも特徴だ。一般的なものよりふた回りは小さい。これはMP関節に体重が乗る感覚を得やすくするためだろう。この足半は人に肉球を作るものなのであった。この足半を肉球とするのではない。指の付け根に肉球感覚を養うための道具なのである。えにし先生いわく「肉球養成グッズ」。
足半は足指を握る感覚を得るにはよい履き物である。鉛筆や太いヒモなどを握ることも良いトレーニングだが、足半は生活の中で、家で履いてさえいればいつでも足指を握っていることになる。足半はかかとがないが、かかとを浮かせてはく必要はない。かかとを床に着けていても、足指を握ると重心が前にかかるのがわかる。これは素足で足指を握っても同様で、それだけで重心がMP関節側に乗ってくる。ただこれらは骨盤が後傾しすぎているとわからないかもしれない。「骨盤おこし」、「胸割」、「腕のポジション」、「脚のポジション」、「足指を握る」など、学んで行く順番はあるのだと思うが、あくまで学ぶのに順番があるだけであって、実はまるごとひとつの全体であることの側面に焦点を当てているということであろう。だから「骨盤をおこすこと」と「足指を握ること」は切っても切れない関連があるわけだが、学ぶ側からするとなかなか「まるごと」というわけにはいかないかもしれない。それは認識の特徴であるわけだが、そうなるとやはり最初に学ぶべきは、「骨盤をおこすこと」になるだろう。確かにそうなのであるが、わたしは今回のセミナーを経て「足指の握り」があってはじめて「骨盤おこし」の端緒に付いたのだと思うに至ったのだった。てなわけで、その理由は次回。
股関節からの上体の屈曲が大事であることの本質は、もちろん骨盤の前傾にある。それは十分承知しているつもりだったが、骨盤がおきたポジションを確認したときの上体の傾き(もちろん個人差がある)を考えれば、ゆっくり走り時に上体がかなり前傾した走りになる人が多くても当然であった。わたしを含めて多くの人が骨盤を後傾したフォームで走っているということだ。股関節から上体を前傾させた(本当は骨盤を前傾させた)フォームは、一見へっぴり腰のようだ。何人ものへっぴり腰の人を、「いいですねえ」とえにし先生が誉めるのを聞いた。このフォームは股関節から「く」の字ということである。へっぴり腰ではないのであった。この姿勢で膝を深く折り畳んでみると、武術研究家の甲野善紀先生が、技に入るときによくする姿勢である。剣術の下段構え以外で、はじめからこの姿勢になることは希だが、動きの中ではよく現れる。いわゆる腰を落とした姿勢だが、甲野先生のは足幅が腰幅ほどで狭いので、腰掛けるような姿勢になる。それでもこの姿勢で走っているのは妙なものだ。これは骨盤おこしセミナーで最初に骨盤がおきたポジションを指導されたとき、ほとんどのひとが深いお辞儀になってしまうのと同様の「妙」さである。これは「胸割り」によって胸が上がってくることで、直立する方向になるのだが、この「胸が上がってくる」というのがわかりにくいようだ。ここで注目するのは、えにし先生の胸の向きである。股割りをして腹が完全に床についているのに、胸と顔が前を向いている。つまり腰椎が反っているのではなく、胸椎が反っている(実際には胸椎の湾曲がなだらかになっている)わけだ。このように胸が割れてくれば、「く」の字の股関節でも上体が起立してくるということである。これが「胸割り運動」の目的なのだ。【中村・股割り動画】しかし、これってハイハイする赤ちゃんの胸だなあ。誰でもみんなこういう柔らかい胸をしていたはずってことだね。
えにし先生のブログに、趾トレーニングアイテムの記事が出ている。ここに紹介されている黒セルスポンジで作ったものは、前回の骨盤おこしトレーニングセミナーで参加者たちと遊んだ木製の試作品の簡易版である。というより、これから製品を作ろうってときに、ホームセンターで調達できる材料での作り方を紹介してしまうのが誠にえにし先生らしいのである。ただ、この簡易版より木製の製品版の方が、トレーニングの幅が広いので、製品版の魅力は全然薄れないのである(と一応言っておこう)。えにし先生は「黒セルスポンジ」はホームセンターで買えると書いているが、考えてみると家の方にはホームセンターそのものがないのであったもうやだ〜(悲しい顔)。
試作品でえにし先生が行ったトレーニングの白眉は、両方の足指でこれの縁をつまんで歩く、というものだった。それは蹄で歩いているように見え、二足歩行で蹄と言えば「牧神パン」と相場が決まっている。そこでわたしはそのグッズを、密かに「牧神の蹄」と名付けた。そのことを日記に書こうと、牧神の絵をネットで探してみたら、リアルな悪魔みたいな山羊頭の毛むくじゃらの牧神ばかりで、イメージしていたものが出てこない。わたしのイメージは、こどもの頃の外国テレビアニメ「マイティハーキュリー」に出てきたかわいらしい「パン」なのであった。で、検索してみたら、少年は牧神ではなくケンタウロスの子どもで、しかも名前は「ニュートン」だったみたいだ。マイティハーキュリーについてはこちら。マイティハニーではない。それはともかく「牧神の蹄」のことを聞いたキシタカさんがイメージイラストを描いてくれた。そうそう、こんな感じを求めていたのよ。仮称「牧神の蹄」は、キノコ型の縁を足の小指側から掬い取るように持ち上げることからはじめる。このとき大事なのが、足指で「掴む」のではなく親指以外の指、特に小指を利かせてひっかけることにある。
それができたら、複数の「牧神の蹄」をきれいに積み上げていく。そして積み上げたものを上から足指で摘んで下ろしてみる。摘み上げるだけではまだ大ざっぱな動作だが、積み上げ、積み下ろしはより繊細な指の動作が求められる。いわば箸を使う手の指のような感じである。あとはアイデア次第だ。全部の「蹄」を倒した状態から始めるとか、高い台の上に積み上げてみるとか。さらに、先ほど述べたようにふたつの「蹄」の上に乗ってしまうというのがある。親指以外の趾で摘み、歩く。ただこれは簡易型のように貼り合わせたものだとはがれる心配がある。やはり企画中の木製の「蹄」が適しているだろう。もし軸足が「蹄」に乗ったままで、積み下ろしができたらすごいなあ。ということで今月22日と23日に開催の骨盤おこしセミナーでは、試作品をはじめ簡易版の「蹄」でのトレーニングの仕方や、動作に及ぼす影響のお話もあると思うので、関心のある方はどうぞご参加ください。
日記、書く時間がないので、「牧神の蹄」の写真とか。「縁」の焼き印が渋い!縁の厚みや形状が違っていて、上下で難易度が変化する。(MARUMITU製)別に上下がなくても「キノコ型」のものなら、趾(あしゆび)トレーニングはできる。もちろんやり方がわからないと意味ないが。あっ、意味ないというのは「骨盤おこし」的にということ。「趾トレ」は「股関節トレ」なんだけど、やりかたが違えばそうならない。こういう話しの流れで書くのも何だけど、以前作ったゴム製趾トレーニング・ブロック。あの材料が渋谷の東急ハンズにあった。これでネットで5枚ワンセットで買わずに済む。昨日、渋谷東急セミナーの講座の後買いに行ったのだけど、ゴム材料をいろいろ見ていたら、リング状のものがあった。このサイズが「10ミリ×50パイ×70パイ」。つまり50ミリ×50パイのゴムの円柱にはめ込むことができるというわけだ。わたしは一応セメダインを塗ってはめ込んだが、ただはめるだけでも趾でつまみ上げるトレーニングには十分使用できると思う。これならだれでも簡単に作れる。5ミリ厚のリングがないのが残念(少なくともハンズの店員は無いと言っていた)。10ミリだとけっこう難しい人もいるかもしれないからだ。というより難しい。やはり10ミリと5ミリがあった方がいい。わたしは10ミリはこのリングを、反対側に5ミリ×70杯の丸ゴムを貼って接着剤が完全に乾くのを待っているところ(48時間かかるんだけどね)。
最近はどの講座、稽古会でもまず趾(あしゆび)トレーニングブロックでの稽古からはじめる。木製の「牧神の蹄」と、手作りゴム製のブロックを使う。使い方はどちらも一緒だが、ゴム製だと両足で乗って歩く「蹄トレーニング」ができない。できないことはないが、しばらく乗っていると貼り合わせたところがはがれてしまう。ゴム製は趾への引っかかりもいいし、重さもあるのでやりやすいようだ。木製は滑るし軽くて動いてしまうし、難しい。しかしやってみるとわかるが、微妙な調整が必要なだけに木製の「牧神の蹄」の方が断然おもしろい。
いま講座で紹介しているのは、前回の骨盤おこしセミナーでえにし先生に教わった基本トレーニングである。まず壁や机などの前に立ち、両手をついて手に体重をかける。つまり壁や机に手をついて寄りかかるわけだ。趾トレブロックを左足の前に置く。右足でブロックをつまみにいき、右足前に運ぶ。次にそれを左足でつまみにいき、左前に運ぶ。これを繰り返す。ただ立ってこれを行うと、片足で立つことに労力を奪われてしまう人も多いし、かかとに重心が乗って後傾してしまったりする。そのために両手をついて寄りかかるのである。趾トレブロックを複数置いて行ったり、積み重ねたブロックを運んで、反対側に積み上げるというバリエーションもある。
この基本トレーニングをやる以前の課題が、ブロックをどうつまむか、ということである。予備知識なく足の指でブロックをつまみ上げてと言われると、10人が10人掴んでしまう。わたしもそうだった。「掴む」というのは「握る」と言ってもいいが、ブロックの縁を足の指で握ってしまう。握ってブロックを持ち上げられる人もいるが、握れない人も多い。「それは掴んでいるでしょう。摘(つま)むんですよ」と言われると、親指と人差し指でブロックの縁を挟む人もいる。「手で摘む」ことを考えるとそう思っても不思議ではない。この場合の「摘む」は足の小指、薬指、中指をブロックの縁に引っかけ、親指と人差し指は添えるだけ(あるいは使わない)でブロックをいわば「つり上げる」ことを指す。このように動作についてのことばでの説明には、使う人の思い(思い込み?)が多分にある。「牧神の蹄」の販売を、えにし先生かその他の骨盤おこしトレーナーによる対面販売に限っているのはそのためである。趾トレーニングは、趾を使えるようにすること、小指と股関節をきちんとつなげていくことにあるので、ただ「掴む」練習を重ねても骨盤おこし的にはあまり意味がないわけだし。この趾トレーニングが股関節のトレーニングに直結することについては、これからどんどん成果が表れてくることと思う。
第17回骨盤おこしセミナーが開催された。今回は「牧神の蹄」での「趾トレ」はもちろんだが、手の指の3、4、5指のトレーニングを行ったのが特徴だろうか。もちろん基本の「前後運動」「胸割り運動」「骨盤おこし式立位体前屈」「股割り」「ゆっくり走り」などもあったが、一日目は趾トレ、二日目は指トレが中心になっていた気がする。ちなみに「指」という漢字はもともと「手の指」のことらしい。
やはり基本は、壁や机などに手をつき、体重を手にかけて前傾を保って行うやりかたのようだ。左足前に置いた「蹄」を右足で取りにいき、右へ運んで置く。次にそれを左足で取りにいくというものだ。「蹄」は当然、趾の小指側から取りにいかないといけない。極力親指は使わないようにする。「蹄」をつり上げたら、脚全体で運ぶ。これによって、小指と股関節の連動がスムースになってくる。反対に「股割り」などで股関節に刺激を入れてから行うと、小指が動きやすくなり、小指と股関節の関連が実感できる。
蹄トレのバリエーションには、
など。
蹄トレの動画があるので、参考になるだろう。「牧神の蹄」(に似た形状のもの)がないと難しいトレーニングもあるが、最も重要なのは親指を使わず小指側から掬い上げるように趾(あしゆび)を使うことである。
「握る」ということについてえにし先生は次のように言っていた。指を摘むように使うわけだが、まず握れないと話しにならない。しかしこの「握る」という動作もポイントがあって、「指」を握るだけではいけないようだ。指の骨は当然手の甲、足の甲にもあるわけで、握る動作はそこも使って行なう。手のひらで包み込むように指を握ること。足の場合は足裏のアーチをさらに深くするように足全体で趾を握ること。こうした手の甲、足の甲にある指関節は見落とされがちだが、これらの緊張は血液の流れを阻害する。この場所に限らず筋肉の緊張や崩れた姿勢は血管を圧迫する。すると酸素不足にもなるし、皮膚呼吸も阻害される。さらに手の甲、足の甲の関節の緊張は、腕全体、脚全体の動きとして捉えないといけない。部分の動きに注目しすぎてはいけない。指の先まで丁寧に洗うこと。先端まで神経を行き届かすことが大事。先端から全体を感じること。
今回は前回より指のトレーニングがクローズアップされた。それは手の小指、薬指、中指を揃えるトレ。最近のえにし先生の日記で、これを「三本の矢」にたとえていた。この三本の「指の頭」を壁の張りや角に当てて、体重をかける。これは爪が伸びているとできない。また意外に三本を揃えることができない人も多い。揃えるだけはできても、指の頭を平にすると小指が離れてしまったり。わたしはふたりで指の頭同士を合わせて引っ張り合う稽古を提案したが、えにし先生によると引っ張ると大胸筋を使いやすいので、押すように使うか、重さを利用してぶら下がるのがいいということだった。「蹄」をこの指の三本の「頭」をぴったり付けて握っておくのもいい。そのまま蹄を床に置いてプッシュアップもいい。この三本をきちんと使えると、腕が肩胛骨から動けるようになるということだった。つまり腕が背中につながるということだ。しばらくは「指の頭」という先端から、からだ全体を整えていく、ということをテーマにしてみよう。
フリーランスになったら、もっと日記を書ける予定でいたんだけどなあ。時間を無駄に使っている気もするが、POMERAもちっとも活躍していないし。第18回骨盤おこしセミナー。でも今回は初っ端から番外編。
今回はセミナーの前にえにし先生に身体を診てもらう機会があった。その手法は「軽擦法」と言って、筋肉の付け根(?)を軽くさするのだが、「軽」とかいいながらこれが痛い!でもえにし先生によれば、痛いのはわたしのからだのせいなのであった。つまり力が入っていなければ(緊張していなければ)痛みはないとのこと。みたては、下半身に比べて上半身は別人のようだということだった。わたしの課題は胸と鳩尾を緩めること。つまり胸割り動作が当面のテーマとなる。あと腰にまだ力を入れているとのこと。力を抜いてきたつもりだが、まだまだ腰でがんばっているのだろう。胸割に関しては、最近けっこう胸椎の動きが出てきたと感じていたのだが、全然みたいなのでがっかりだ。それでも以前よりはずいぶんマシになってきているのは間違いない。それでも今回「まだまだ、全然」ということがわかったので、ちょっと気合いを入れ直す。今回のは「治療」というより、わたしにとっては骨盤おこしの「個人指導」といった感じだ。胸骨の痛みは数日残っていて、それを手がかりに胸割り運動の質を変えることができたように思う。具体的にはこれまでの胸割りは、胸椎が縮んだ結果胸骨が出るという感覚だった。これも胸椎を押し出すことで胸を出す、という感覚から「縮む」に変化したものである。しかし今回「個人指導」後では、胸割によって、腹筋が伸ばされるのがよくわかるようになった。腹圧を胸を引き上げる方向にかけていくのは、えにし先生がダンスの人たちに指導していることだ。あと女性。腹圧でお腹を膨らませることに抵抗のある女性が多いが、腹を前に膨らませない腹圧のかけかたがこの胸を引き上げる方法である。腹圧をかけるというのは、要は「腹筋を元の長さにする」ことであって、腹筋をゆるめることで腹が膨らんでくることのようだ。だから腹筋を「前の方にゆるめる」のではなく「上の方にゆるめる」というわけである。まあ、これはわたしの感覚を言っているので、正確な説明ではないのだが。
で、今回えにし先生の個人指導を受けてからは、「引き上げる腹圧」と「胸割」の関連がすごく感じられるようになったというわけである。このことと「肩胛骨のポジション(=腕のポジション)」との関連が明確になってきている。どれもすでに「知っていること」ばかりであるが、感じてはいなかった。今回、何名かがこの「個人指導」を受ける機会を得たが、おそらくえにし先生にとってもこのようにまとまって「骨盤おこしトレーニング」の実践者のからだを診るのははじめてだっただろう。通常は治療にきて、トレーニングを指導されるという順序だろうが、今回は現在のトレーニングの課題をからだを診ることで発見し、文字通り「個人指導」となったのである。関東でトレーニングを続けている人は、こうした指導「治療」を受けるには、愛知県へと出かけなければならないのは残念であるが、こちらでもまた個人指導の機会を作れればと考えている。
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