中島章夫氏レポート|構造動作歴7年、東京世話役がみた骨盤おこし〜構造動作トレーニング

7.祝・骨盤おこし|「骨盤が前方にコロン」〜骨盤おこしトレーナー認定 2009年1月27日(7〜12)

昨日、朝歩き始めたらなにか様子が変だ。胴体はまっすぐなのに、骨盤がくるっと前に転がってしまっている。これはもちろんわたしの主観的感覚。骨盤がおきた状態になっているということだ。「骨盤おこし」と出会う以前の、わたしの骨盤は後傾していたが、それは「後傾させていた」のであっておこせない(前傾できない)のではなかった。そうはいっても骨盤おこしトレーニングを始めた当座は、上体を前傾させないと骨盤がおきない状態だった。イスに座る機会(仕事、食事、電車など)があれば、骨盤をおこすようにし、武術の稽古でも骨盤おこしと技との関連をずっと考えてきたので、そこそこ骨盤がおきるようになってきた。ところがそれは「骨盤がおきている」のではなく、「骨盤をおこしていた」のだと昨日の朝、知ったのであった。それはもう骨盤だけが背骨と離れてコロリと転がってしまった感じである。骨盤がふわふわとして頼りないようなのに、歩く足元はしっかりと地面を捉えている。そこで面白い事に気付いた。この腰の構えだとMP関節に重心が乗ってきて、さらに足指で地面を「キャッチ」できるのである。しかも(わたしは雪駄を履いて歩く事が多いのだが)鼻緒も自然に摘まめている。またMP関節に重心が乗るためか、胸も前に押し出される。「骨 盤がおきる」「MP関節に重心が乗る」「足指を握って地面をキャッチする」「(下駄や草履の)鼻緒を摘む」「胸を出す」などは、それぞれ骨盤おこしトレー ニングのメニューのひとつだが、骨盤が脊椎から外れたかのごとく前方に転がるとこれらのメニューがセットであったことがわかる。この骨盤の状態は、上体の前傾を伴わずに骨盤をおこすことができるということである。上体はただまっすぐにしていても骨盤がおきているということである。ずいぶん大げさに聞こえるだろうが、これでやっと骨盤おこしの入り口に立てた気がするというのが実感である。
「もっと先がありますよ〜」とは、骨盤おこしセミナーの講師、Takahiroさんの口癖だが、「あると思います!」(by 天津木村)

8.ロシア武術システマと骨盤おこし

スコット先生の肩

朝日カルチャーセンター新宿で、来年1月期からはじまるロシア武術のシステマ講座。そのプレ講座が10月に三回行なわれた。で、一回ごとに東京にいる三人のインストラクターが担当したが、三回目の最後はイギリス人のスコット先生だった。講座の内容はスコット先生の十八番であるストレッチ各種。よくこういう格好を思いつくなあ、という感じでからだ中の関節のサビ取りをする。いろいろからだを動かしながら、それがストライクにつながっていって、最後はふたり組みでけっこうバチバチと殴り合った。こんな風に書くと、システマが怖いものだと思ったり、逆に血が騒ぐような人もいたりするかもしれない。しかしシステマのやり方は、本当にゆっくり丁寧にストライクに移行して行くので、割りと自然にストライクをできるし、受けることができる。もちろんお互いに無茶しないということもあるわけだが。で、いつも感心するのはスコット先生のストライクの構え。実に肩がゆったりとして、胸が肩の位置からグウッと前に張り出して、頭がその上にまっすぐに乗っている。脇を楽に開いた中段に構えた腕は、肩からぶらさがっているように見える。そのぶらさがって静止している腕は、誰かが片方の拳に触れればいきなりガラガラと崩れ、触れた人の上に落ちてくるような動きを秘めている。スコット先生の胸を張った姿勢は、松聲館の甲野先生が言っている、写真に残された胸をすぼめた日本の侍の姿勢とは正反対のように思うかもしれない。しかしスコット先生(あるいはシステマの姿勢というべきか)のは、いわゆる「気を付けの胸を張った良い姿勢」というのとは違うのである。気を付けの姿勢の多くは、肩甲骨を寄せて、肩を引いた姿勢である。これは演出家の竹内敏晴氏が甲野先生とのテレビ対談で言ったような、「自分では次の行動に移れない、人を使う上官の姿勢」である。しかし肩の位置をそのままに胸を前に出した姿勢は、十全に腕を使うためには必要な姿勢なのだということを「骨盤おこしセミナー」で学んだ。スコット先生の腕の構えは、まさにそれで、堂々としていて居つかず、腕が後ろにあるようなのに、どこまでも伸びてくるように見えるのである。実は甲野先生も立ち止まって姿勢の説明をするときには、胸をすぼめて腰を後傾させるような構えをするが、動きの中では後傾から前傾へ、胸はすぼめた上体からフワッと前面に張り出してくるのである。つまりその動きの幅が圧倒的に広いのである。わたしたち稽古する者は、そこをよく観察せずに説明を鵜呑みにしたり、その変化が見えていながら、ことばの方に従ったりしがちなのである。わたしは表面上(あるいは言葉上)は甲野先生の動きと多いに矛盾する「骨盤おこし」に出会うことで、今ごろになって「動きから学ぶ」ことの大切さを知ったのであった。

北川先生のお尻

朝日カルチャー新宿での「ロシア武術システマ」の講座の講師である北川先生は、以前甲野善紀先生の恵比寿稽古会に来ていた稽古仲間でもある。それがいつの間にかシステマのインストラクターになっていた。この講座に参加した折、北川先生が「骨盤おこしってどういうのですか」と聞いてきた。最近「骨盤、骨盤」とわたしと周辺の人たちが騒いでいるので気になっていたという。そこで基本的な骨盤が起きた位置を示すために、正座をしてもらった。そこから股関節から折って、骨盤がおきるところまでお辞儀をしてもらうのである。ところが北川先生の骨盤を触ってびっくりした。その時点でもう骨盤がおきていたのだ。ふつうに座ってもらったので、胴体が前傾しているわけではない。ただまっすぐ骨盤の上に胴体が乗っているのである。こういう人は骨盤おこしの師匠、Takahiroさん以外見た事がなかった。しかし考えてみれば、骨盤のこの傾きが自然だとすればそういう人がいて当然である。元々、赤ちゃんのときの骨盤をそのまま維持してきたのか、いろいろなトレーニングのなかで身に付けたものかはわからない。おそらくは後者であろう。北川先生は複数流派の空手やら甲野流武術やら、もっとあやしいトレーニングやら、野口整体やらやってきたので、その過程でいつの間にか獲得した(赤ちゃんに戻った、か?)もののように思う。そしてシステマの柔らかいトレーニングが、それを補強したのではないか。本人いわく、基本的な腰の構えは野口整体かもしれない。その後システマのトレーニングをするなかで、仰向けに寝て両足をどんどん上げて頭の向こう側の床に足指を付けるような体操を散々やったらしい(ヨガのスキのポーズみたいな形)。この格好で、両足の重さを利用して腰をブラブラさせたりしたのが、仙骨と要椎の「つなぎ目」を柔軟にしたのかもしれない、と。そのために骨盤がおきた位置になっても、脊椎はスラリと立っていられるのかもしれない。わたしもかねてより、骨盤がおきたまま胴体が直立するには要椎五番と仙椎とのジョイント部の柔軟性を如何に実現するかだと思っていたので、うーんと唸ってしまった。それで後日、恵比寿の稽古場に来てもらってみんなで北川先生のお尻を触らせてもらったのであった(笑)。もちろん「お尻」ではなく「骨盤」なんだけどね。ところで、前の日記にも書いたわたし自身の腰の変化は、これより後のことでいまは北川先生のような「腰つき」である。まだまだTakahiroさんの腰には及ばないものの、なかなかのものなんである(笑)。これは骨盤おこしのトレーニングの他に、腰骨と骨盤のつなぎ目あたりを、指で撫でていたことが原因ではないかと密かに思っている。「撫でただけ?」などと思われるかもしれないが、その時期特別にやっていたことといえばそれだけである。そのことが腰の柔軟性を促したことは十分に考えられる。

9.第四回骨盤おこしセミナーでのこと 2008年11月17日

もう二日で第五回骨盤おこしセミナーなのに、今さらなんだが、第四回骨盤おこしセミナーでのこと。いわゆる「古武術介護」の技術である「添え立ち」についての質問があった。

添え立ち

「添え立ち」というのは、長座(両足を前に伸ばして座っている姿勢)の人を、ひとりで背後から抱きかかえて立たせるもの。前の講座で、介護をやっている人が「添え立ち」を見せたことはあったが、そのときは当事者のより良い腰の構えなどの指導だけで、Takahiroさんがどうやるかを見せたわけではなかった。今回はTakahiroさんならどうやるか、ということで大変興味深かった。甲野先生系統の武術を応用した介護術でも、それぞれの工夫や、施術者の状態でいろいろなやり方がある。現在の甲野先生は後ろから腕を回して(この回し方にはいくるかコツがあるが省略)、相手の背中にピタッと柔らかくくっついてただ立ち上がるだけというものだ。ある意味これが現在の先端で、自分ひとりが立つだけで相手も立ち上がっているという感じだ。しかし、当然のようにこれには技術がいる。ただそう思えばできるというわけにはいかないのだ。そこで武術を応用した介護術の顔である岡田慎一郎さんは、講習会では自分が後ろに倒れることを利用して相手を立たせるバージョンを紹介している。

Takahiroさんのアイデアは、甲野先生的にそのまま立ち上がるというもの。まずは施術者は骨盤をおこしてしゃがみ、相手の背中から腕を回して胴体を抱く。このときの抱き方は「赤ちゃんをだっこするように」柔らかくすること。相手に密着するが、ここで腹圧をかけてさらに密着する。そしてすっと立ち上がると、相手はフワッと立ってしまった。ここでTakahiroさんが、骨盤おこしらしい提案をした。それは長座している人の骨盤もおこしておくと、相手も動作がしやすくなり、立ち上がりやすいというもの。相手の脚の片方でいいから、膝を少し曲げて外側に開くようにする。こうすると股関節が動きやすくなるので、骨盤も前傾しやすくなる。そこで腹圧をかけて相手に密着するとき、相手の背中を少し押し前傾させるようにする。つまり自分の骨盤と相手の骨盤の角度を揃えるようにして、立ち上がるということであった。この相手の「骨盤がおきやすくする」という発想は大変興味深いものだった。仰向けに横になっている相手の上体を起こして長座姿勢にする「上体起こし」のときも、まず相手の膝を曲げて股関節が動きやすくしてからやるなど、応用範囲は広い。

このセミナーの後、甲野先生や岡田さんの介護術を見る機会があった。すると甲野先生は「添え立ち」で相手の肩あたりに頭を密着させるとき、前に押すようにして相手の上体を前傾させていた。また岡田さんは椅子から立たせるときに、相手の仙骨に当てた手をぐっと押して骨盤を前傾させてから立ち上がらせていた。このほかにも、相手の骨盤を前傾させるような動作が要所々々でいくつも見られた。いくつかは意図的に、多くは無意識的に動きやすい動作を求めてそうなっているようだった。骨盤おこしの説く動きの原則から見ることで、これまで見逃していた動きが見えてくることがとてもおもしろいことである。しかもそれらは、うっかりすると説明からも洩れてしまうし、学ぶ側も見逃してしまうようなものであるが、それこそが「コツ」の中心部分であったりするわけで凡人であるわたしは「知っていると知らないでは大違いだなあ」と思った次第である。

10.動きの中の姿勢を見ることが大事 2008年11月29日、30日

2008年11月29日、30日の両日に骨盤おこしセミナーを開催した。講師はえにし治療院院長、中村考宏先生。mixiではTakahiroさんなので、この日記でもそう呼ばせていただく(なんて言って、これまで断りなくTakahiroさんだったけど)。今回もセミナーのレポートと言うより、わたしの気付きを書くことになる。

「その先がある」

セミナーが終了してから、わたしがしみじみと思ったのは、動きの中の姿勢を見ることが大事だったのだということだ。わたしはすこし前に骨盤のポジションに変化があり、骨盤の構えばかりに注意が向いてしまっていた。骨盤がおきてその上の背骨が立つようになるのがいいことだと思ってしまっていたのだ。(いま考えると背骨が骨盤の上の立ったかどうかもあやしいものである)しかし股関節をきちんと使って動いているか、の方が大切なのである。それがあっての骨盤の構えであった。まあこれも「骨盤おこし」に対する理解の過程と思えば、間違いとか正しいという話ではないだろう。
つまり「その先がある」という話ではないだろうか。たとえば今回も開脚前屈への挑戦で、ひとりは腹と胸がつくまでいき、もうひとりは「その先」までいった。足が開くだけでもうらやましい人間(←わたし)には夢のような話だが、Takahiroさんは「開脚前屈は、からだが柔らくて出来てしまう人がいる。それは股関節が使えているのとは別問題」と言うのだ。まあ、なんて贅沢な発言(笑)。足の指を握って、足で拳を作るのでも、見事に握り込んでしまう女性がいた。それをTakahiroさんに見せたら、「柔らかくて握れてしまう人もいるが、しっかり握れるのとは別問題」。う〜ん、贅沢(笑)。別の見方をすれば、すでに「出来ている」ことへの評価は低く、「変化」への評価が高いってことかもしれない。もちろん初参加の人は、以前がどうだったかわからないわけで、べつに「ただ出来てしまった人」かどうかわからないわけだが、開脚にしても足拳にしても、骨盤おこし的な目的と方向性があるわけで、ただその形ができることが目的ではないということだろう。逆に言うと、開脚の角度が狭かったり、膝が大きく曲がっていたとしても、股関節の力を高める方向でトレーニングをすることが大切ということだろう。これは骨盤の傾斜にばかり目を奪われていた自分にも当てはまることだ。いずれにしてもどんな人でも「出来ていない」わけだから、常にその人なりの「その先」があるわけで、「これでいい」なんてことがないのはなんでも一緒かもしれない。

混乱するからだ

今回、Takahiroさんがよく言っていたのは、スポーツをガンガンやってきた人や、からだに関していろいろなことをやってきた人ほど、シンプルな動きができない、ということだった。骨盤おこしの基本動作は、正座、あるいはイスに腰かけて、股関節からお辞儀をするだけだ。つまりからだを股関節を境に上と下に分け、折りたたんで行くだけなのだ。しかし背骨から動いてしまう人も多い。また股関節から畳めたら、次は胸を前に出してお辞儀をする。このとき肩甲骨の位置より胸椎を前に出すのだが、肩甲骨ばかりが動いてしまったりすることもある。つまりからだの部分が動きすぎてしまうのだ。こうしたことをTakahiroさんは「からだが混乱している」と表現した。頭で考えすぎてしまうのか、あるいはからだを「操作」しようとしてしまうのか、ともかくからだを動かすことをやってきた人ほど動きが混乱して、シンプルに動作ができないらしい。まずは股関節から動くこと。そのことから始めたい。それに胸を出すこと(胸割り)、腹圧をかけること、を足していけばいい。そして続けていくうちに、「胸割り」も「腹圧」も、シンプルに股関節から胴体を動かすためにあることに気付くだろう。

大腿四頭筋をゆるめる

セミナーで毎回やっているし、いつも面白いなあと思っていることなのに、今回はいつもに増して気になっていることがある。それは立って股関節で上体を折って前傾させると、大腿四頭筋(太股の前の筋肉)がゆるむということだ。これは骨盤前傾の目安にもなるので、自分の稽古でもよく紹介している。Takahiroさんは、どんな種目でもここがゆるんでいることが大事と言った。今回のセミナーで骨盤をおこして歩くこともやったのだが、全員でウルトラ怪獣のガラモン(あるいはピグモン)のように、手をだらりとして歩き回るのがおかしくて、ゲラゲラ笑っていただけだった。セミナーの翌日、ふと「歩いているときも、大腿四頭筋はゆるんでいないといけないのでは?」と思った。「思った」ではなく、当然Takahiroさんは言っていたに違いないのだが、講習会や稽古のときは、なるべく頭を働かさないようにしているので、後になって気づく事が多い。本当は頭が働かないんだけど(笑)。そこで毎日、ズボンのポケットに手を突っ込んで、指先で大腿四頭筋を触りながら歩いている。ズボンの上から触っているとちょっと妙だからね。まず、腰幅に足を開いて立ち、足指を握るようにして指先を接地するようにする。胸を前に出すように上体を股関節から折って前傾させて行くと、大腿四頭筋がユルユルになるポジションがある。そのユルユルを保つように歩こうとするのだが、足を出して接地すると固くなってしまう。大腿四頭筋と骨盤の傾斜が変化してしまうからだと思うが、歩くということはそういうことなので、弛んだまま歩くのは不可能な気がしてくる。それでも毎日々々ヒマさえあればやっていると、ふと大腿四頭筋が柔らかいままで歩けるときがある。その時「おおっ!」と思っても、何か別のことをしているとどんな風だったか忘れてしまい、また歩くたびに固くなってしまう。それでもやっている内に、段々に方向性が見えてきた。

腹圧と胸

まず、骨盤おこしの基本は抑えること。

  • 足は腰幅(股関節幅)
  • つま先は軽く外に向ける(逆ハの字)
  • 足指は軽く握る
  • 胸を前に出し、胴体を股関節から前傾
  • 腹圧をかける

ここまでは姿勢のこと。歩くのはセミナーでやった通り。

  • 足をつま先方向に出し、足裏全体で接地
  • 出した足のMP関節(足指の付け根の関節)に体重を乗せる
  • 軸足がつま先方向に振り出されるので足裏全体で接地
  • 後はくり返し

腕は力こぶが前を向くようにして、手のひらで砂を掬うようにして前腕を肘から曲げ、それから手のひらを下になるように返す。さすがに道路はガラモン=ピグモンの腕の格好ではあるけないから、そしてポケットに手を入れて、大腿四頭筋を触る。それでもなかなか難しかしいのだが、どうもポイントは腹圧にあると見ている。腹圧を上手に「かけ続ける」と、一歩踏み出しても骨盤が起きた状態を保てるので、大腿四頭筋は弛んだままのようなのだ。逆に考えるとどうも、動くと腹圧が抜けてしまうということだろう。もうひとつは「腹圧のかけかた」にあるようだ。これは単に下腹を膨らませるのではなく、グッと力をかけて膨らませるのである。Takahiroが「カエルの腹みたいにパンパンに膨らませる」と言っているが、まさにその通りなんである。「力を入れる」というと腹を凹ませる方向に力を入れてしまう人がいるが、それは外から中に向かって力を入れているのであって、腹圧をかけるというのは内側から外に向かって力を入れるのである。こうして文字で説明しても、分かる人には分かるが、分からない人には分からないだろう。そしてそこから、もうひとつ下腹に「ググッ」と力が入ってくるようにする。これはおそらく色々の丹田呼吸法の腹・腰の感じと同じか、似ていると想像するのだが、腹の方向と腰の方向に力が入って両方を押し出そうとする。こうすると骨盤がおきた状態が維持できるので、歩いても大腿四頭筋が弛んだままになるのである。もちろん上に書いた姿勢と歩きの基本が守られていることが前提だ。特に胸の押し出しは大事である。「腹圧をもうひとつかける」ことと「胸を出すこと」で、骨盤はおきたポジションになる。と、ここまで書いてきて思うのは、すべてはTakahiroさんがセミナーで言っていたことばかりだということである。「腹圧をもうひとつかける」ことの関連日記は後で書くことにする。

2008年12月16日

先週12日金曜日の池袋での講座に行った折り、甲野先生の話をしている姿勢ばかり見ていた。講習会に出たことのある人にはおなじみの、袴の股立(ももだち)のスリット部に手を入れて、どちらかの足を「ヤスメ」のように斜め前に出した姿勢である。というのも骨盤おこしのTakahiroさんが、甲野先生が技の説明をしているときの立ち姿は、大腿四頭筋が弛んでいると言ったからである。大腿四頭筋が弛むように立つには、まず骨盤がおきていなくてはならない。骨盤がおきるというのは、ふつうの感覚からすると骨盤が前傾すると表現した方がいいだろう。わたしなどは自分のいまの骨盤のポジションは、「おきる」というより前方に転がったぐらいの感じがしている。だからことばや図、写真で骨盤だけでおきたポジションを説明されても、きっとよくわからないのだろう。実際の感覚では「こんなに前傾?」という感じがするのである。もうひとつの条件は、背骨自体は自然に伸びていなくてはならないこと。過度に反って緊張があったりしてはいけない。さらに、というかその背骨の状態にするためにというべきかもしれないが、腹圧をかけること、胸を前に出すこと(猫背にならないこと)がある。甲野先生の日ごろの武士の姿勢に関する言動からすると、いかにも背を丸め、腰も反らさず、いわゆる現代スポーツからみると「悪い姿勢」をしているかのように思うが、実際の姿勢はそうではない。からだが柔らかいため、上体をすっと立てたまま骨盤は前傾している。つまりお尻をピョンと引き上げているのである。胸を張っているようには見えないが、肩の位置は耳のラインにあり、前方に巻いてもいない。これに関しては甲野先生が「正面から見て、着物や道着の肩のところにシワが寄らないように」という姿勢について言っていることからも偶然のことではない。腹圧については云わずもがな、である。そこで、甲野先生の立ち姿を真似てみた。するとたしかに大腿四頭筋は弛んでいるのである。真似してみて腰骨が反ってしまう人は、股関節から折るお辞儀をするとよい。これは正座での骨盤おこし運動と同じ。ここで重要なのは腰骨が楽なまま、骨盤を前傾させることだから、「立ち姿としては変!」ということは気にしない。このときわたしが思ったのは、この「甲野式ヤスメ」の構えで、出している足に重心を移し、反対の足を一歩前に出してヤスメの姿勢をとってみても当然大腿四頭筋は弛むだろう、ということであった。これは何を意味するのか。左右の足で交互にヤスメの姿勢を繰り返すと、「歩いている」ことになるのである。そしてこれはTakahiroさんとやった「ガラモン=ピグモンの歩き」にすごく似てくるのである。さらに大事なことは「ヤスメ」の姿勢は足を出すのである。歩くのではなく、ともかく片方の足をちょいと前に出す。このときはまだ軸足から体重を移動しない。「ヤスメ」の前に出した足裏が接地する。それを待っていたかのように(まあ待っていたんであるが)、体重を前に出した足に移す。と同時に軸足だった足を前に出し、左右逆のヤスメの姿勢になる。ヤスメの姿勢で出した足にひょいと体重を乗せると同時に反対のの足を前へ出す。その足に体重をひょいと乗せると同時に反対の足を出す……あとはくり返しである。であるからして、最初のヤスメの姿勢が肝心ということになる。この時点で大腿四頭筋が弛んでいなければ話にならない。この歩きを池袋の会場の隅でやっていたら、ある人に「足幅を小さくした八卦掌の歩法みたいですね」と言われた。確かに軸足に体重を残したまま、足を出すのはそんな感じだ。で、八卦掌の歩法と言えば「平起平落」。「平起平落」といえば「足裏の垂直離陸、垂直落下」。しかも、出した足にひょいと体重を乗せるのは「抜足/踏足」の歩法である。こうして甲野先生を挟んで、「骨盤おこし」「半身動作」のラインが出来あがったのである。まあ、無理矢理なんだけどね(笑)。それにこのやり方でも、大腿四頭筋をゆるめたまま歩くには微妙なコントロールが必要である。それでもそのように歩ける場合があるわけだから、そうなる条件を吟味しつつさらに歩法の追求は続く

11.「骨盤が前方にコロン」「胸椎のつかえが取れる」

これは2009年1月7日の夕方のことだ。地下鉄の通路を歩いていたら、突然胸のつかえが取れた。話を戻そう。

胸割り

昨年7月から11月と「骨盤おこしセミナー」を体験し、それからは股関節の動き(骨盤の傾き)と胸椎を押し出すことをしょっちゅう考えるようになった。「骨盤おこし」では、当然のこととして「骨盤をおこすこと(骨盤の前傾)」とが基本テーマだが、もうひとつ「胸椎を肩甲骨より前に出す」ことも切り離せないテーマなのだ。胸椎の運動について、提唱者のTakahiroさんは胸割りと言っている。武道、武術や、日本の伝統芸能を修行している人にとっては「背を割る」という表現の方が馴染みがあるかもしれない。わたしはつい、これらのテーマを「腰を入れる」「背を割る」という言い方をしてしまう。まあ、「腰」に関しては思い浮かべる部位が人それぞれなので、「骨盤おこし」の方が伝わりやすいが、「胸割り」に関しては「胸を出す」「背を割る(背中を割る)」という方が説明しやすい。あと「胸の谷間」にひっかけて「背中の谷間を作る」とか言ったりする。で、問題は胸椎なんだけど、歩くときにいつも胸椎を前に出すようにしていたら、いつの間にか胸椎の五番(肩甲骨の間)あたりを棒で押されている感触になってきた。立ち姿勢の動きの焦点が、胸椎に上がってきたのだろうと思うが、ともかくそのあたりを棒でチョンと押されながら歩いている気分なのだ。これはこれで胸椎に動きが出てきた証拠だろうと、喜んではいたのだが、ともかく胸が詰まるような、呼吸が苦しい感じなのである。「胸割り」で胸が肩甲骨の位置よりグッと前に出るようになると、呼吸が楽なはずなのに、これでは反対だ。それでもこの方向性でいいのだ、と思っていたのでそのまま年を越した。

胸が割れる

それで1月7日である。帰宅するために地下鉄の通路を歩いていたら、突然胸椎が上の方までグイッと前方に入ったのである。本当に突然だったので足元がふらついてしまったほどだ。でもこのフラフラ感が覚えがある。ある朝外を歩きはじめたら、骨盤が「前方にゴロンと転がった」あの日の感触だ。あのときもフラフラ、グラグラのまま歩いていた。そして呼吸は嘘のように楽になった。おかげでこれまで、「胸を出す姿勢」にしていたのに対して、その日を境に普通にしていて「胸が出た姿勢」になるようになった。でもこれからもっともっと動くようになるはずだ。ところで、胸椎に焦点を集めて歩いていたらそうなった、と書いたが、実際はしょっちゅう股関節から上体を前傾させる基本の「骨盤おこし運動」をしていたからだと思う。基本の基本ではなく、一段上の「胸を前に出す骨盤おこし運動」だけど。つまり「骨盤が前方にコロン」も「胸椎のつかえが取れる」も、基本トレーニングの結果として訪れたのであって、ことさらそれを目指してするというのとは違う気がする。今回のことも、胸椎が前に行くのを止めていた筋肉の緊張が解けたために「突然」に起こったわけだが、筋肉の緊張を解く準備は少しずつ行われていたからの結果といえる。「その先」を目指すにしても、具体的な状態を想定するのではなく、基本トレーニングを続けていることで「何かが起こる」ということでいいのではないか、と思うのだ。

12.骨盤おこしトレーナー認定 2009年1月27日

なんと!Takahiroさんから、「骨盤おこしトレーナー」の認定を受けてしまった。これからはわたしを「骨盤おこしトレーナー風仙」と呼んでください(笑)。…などと冗談っぽく言っているが、言われたわたしの方がびっくりである。「股割りもできないのに」と言ったら、わたしにしか出来ないことがあるからいいんです、とのお返事。どんどんみんなの骨盤をおこしてまわってください、と。昨年7月にはじめて「骨盤おこしトレーニングセミナー」を開催して、わたしは自分でも想像もしていないほど、衝撃を受けた。何度かセミナーを体験する内に、「骨盤おこし」を知る前後で人生が違うほどの影響を受けたことがわかってきた。生涯のテーマである甲野善紀先生の武術を追求する上でも、羅針盤を手に入れたと感じた。「骨盤おこし」の視点はとてもシンプル。トレーニングも同様に単純明快である。だからこそ羅針盤になる。しかし明快だけど簡単ではない。何がシンプルで単純で明快なはずの「骨盤おこしトレーニング」を難しくしているのか。それはものごとを複雑にしたい頭であり、それに支配された筋肉である。観念の囚われから自由になり、筋肉の鎧を脱ぎ捨てていくのは、わたしたちの武術の稽古と同じである。技の稽古と違うところは、何をどうすればいいかも明確なことである。注意点を守りさえすれば、後はひたすらくり返すだけだ。きちんとトレーニングすれば、必ずからだは変化して、次の段階があらわれる。そうなったらその段階のトレーニングをやっていれば、また次ぎがあらわれるのである。やったらやっただけのものがあるのである。わたしなどは、まだ初歩の初歩、足を踏み出したばかりであるが、そういうものであろう、とはっきりわかる(「気がする」と付けておいた方がいいのだろうか)。このときの問題は、先ほど言った「注意点を守りさえすれば」である。では「注意点」とは何か。トレーニングの段階で注意点は少しずつ変わるが、どれも「複雑にしない」という観点からの注意点である。これも「骨盤おこしらしい」といえる。こうしたシンプルな構えと運動の方向性を基に、専門の動きを乗せていけば、はっきりと見えてくるものがある、とわたしは感じている。

 

 

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