25.骨盤おこしセミナー 2010.1/24

今回の骨盤おこしセミナーは、比較的いつもより年輩の方が多かった。ご夫婦での参加者もいたが、おひとりでの参加者の方が多い。それでも年輩の方々は旧知の間柄のように、すぐにえにし先生を囲んでいろいろな話しで盛り上がる。年の功というのか、会場があたたかい雰囲気になる。もちろん若い人の参加もあったが、きっと職場ではもう「若い」とは言われないと思われる人も、ここでは「若い内にこういうことを知って、うらやましいわあ」とか言われるので、それはそれで気分がいい(かもしれない)。ある意味骨盤おこしセミナーは、同じことの繰り返しと言えるが、こうして毎回セミナーに占める世代も変われば、からだに関しての関心も違う人々によって変化する。たとえば今回は、膝が内側に入ってしまっている人が膝と足先の向きをまっすぐにするための体操として、長座での足の進展、背屈運動が紹介された。これは股割がきつい人に、まずはこれからということで紹介されることが多いが、今回は別の角度からのアプローチだった。もちろん今までも、脚をまっすぐに使うためという説明があったこともあったが、必ずということではないし、この運動そのものもやったりやらなかったりする。このように参加した人の質問によって、知っている運動に別の角度から光が当たることもあるし、まったく新しい運動が紹介されることもある。いずれにしても自分の中にその運動の感覚がないと、説明も文字通り腑に落ちない。初めての参加者が基本的な動作の指導を受けているのを見ていても、毎回新しい発見や理解があるのは、自分の実践によって感覚の受け皿が広がってくるからなのだ。今回は個人指導のために胸割り系統にひどく敏感になったようである。ゆえに腹圧の話しの中でも思い至ることがあり、腹圧と同時に「胸圧」(こういうことばで指導があるわけではないが)について日々検討を重ねているところである。

2010年2月17日

足指をしっかり握れることは重要である。からだを支えること全般に関わることだからである。武術・武道の流儀によっては足指を浮かせるものもあるようだが、それでも「握れる足指を浮かす」から効果があるのではないかと思う。骨盤おこしでおなじみの構造動作トレーニングの教えでは、関節は曲がる方に使うのが基本である。足指もまずはしっかりと曲がる方に曲げられることが大切である。なぜこのようなことを言うかというと、わたしも含めて、しっかり握ることができない人が存外多いからである。これは握り込んだ足指の一本を、手の指で開こうとしても動かないほどに握れるということである。しかしそれ以前に小指などが浮いてしまって握れない、握るとすぐ指がつってしまう。あるいはそもそも握れないという人もいる。これでは満足に立つこともかなわない。

足指をどう握るか

足の指を握るというと、つい指を握ってしまう場合が多いだろう。これは手の場合で言うと、手のひらをそのままに指のみニギニギしている状態である。
手の指を握り込んでみると、指といっしょに手のひらも折れて指の頭が手のひらに付く。足の指も同様で、足裏も折り畳んでいくように足指を握るのである。足は手と違ってあまり動かないのでわかりにくいが、足指の頭とかかとを付けていくつもりで、足裏と指で止まり木を握るように足指を握る。構造動作トレーニングの中村考宏先生は「足の裏に力こぶを作る」という表現をしている。力こぶはできないが、そういうつもりで足裏全体で握るのである。
蹄トレーニングで苦戦する人も、足裏をこのように使って趾ブロックをつまみにいくと、しっかりつまめるようになる。足裏を使えば指先も大きな力が出るのである。

26.第19回骨盤おこしセミナー2010年2月27日、28日

2010年2月27日、28日にあった第19回骨盤おこしセミナーにて。

腹圧を胸の方に引き上げる方法

かねてからえにし先生が、ダンスの人や女性など、腹圧をかけてお腹をパンパンにしたくない人は胸を斜め上に引き上げるようにするといい、と言っていた。腹圧は腹筋を延ばしていく(えにし先生に言わせると「元の長さにする」ことらしい)ことであるから、お腹をふくらませる方向(前方)に延ばしても、胸を引き上げるように上方向に延ばすのも同じと考えていいのだろう。第18回からわたしのテーマは「胸出し」なので、この「服圧」と「胸圧」についてはいろいろ試していた。いったん前方に腹をふくらませて、胸の方に引き延ばすような感じで腹をへこませていく。こうすると、お腹に力を入れて縮めるのと違い、腹筋は弾力を持ったままとなる。腹圧を胸の方に持ち上げていくというのはこういうことかな、と思っていた。今回のセミナーえにし先生がそのやり方を説明する場面があった。

その説明は至ってシンプルで、
「まず服圧をかけてお腹をパンパンに膨らます」
「そのまま胸を出していく」
ということであった。

つまり「膨らませた腹をへこませた分、胸を引き上げる」と言ったような小細工はないのである。結局、細々した工夫より「腹圧をかけて」「胸割り運動する」という基本トレーニングを行うことが大事だったのだと思うに至る。気が付いてみればはじめから説明されていたことなんだよね。「胸割り運動」を腹圧をきっちりかけて行ってみると、腹圧をかけたまま(へこませるとかしないで)腹筋が引き延ばされるのがわかる。胸にもきちんと圧がかかってくるので、このやり方を続けていくことで課題の「胸出し」が解決したいものだ。今回股割りに関しても「えにし先生が言っていた通りだった」という話題が出たのだが、これもまた「腹をふくらませて」とはじめからえにし先生は言っていたのだ。腹圧をかけて基本トレーニングを行うこと。そういう意味では「振り出しに戻った」のかもしれない。

27.身体の軟らかい人

2010年4月2日

 

前回、第19回のセミナーのとき、大変体の柔らかい人が参加して、見本となるような「立位体前屈」をえにし先生の指導で行った。今回、第20回でも柔らかい人がいたのだが、柔らかい人が関節の動きがいいわけではないということをわたしはなかなかわからない。「立位体前屈」の女性も、ふつうに手が床に着いてしまうが、股関節からの屈曲ではないためえにし先生が指導して写真のフォームまで持っていった。股関節はともかく動く人だから、股割りトレーニングでその人が座布団で尻を高くしてやっているのを見て、そんな必要ないのではないかと思ったのである。(骨盤おこしでは股関節が固い人は座布団を重ねて尻を持ち上げて骨盤が起きやすくして股割りを行う。)ところがえにし先生は「この人は骨盤が後傾しているから」と言うのである。見た目には後傾しているヒップにはみえないのであるが、えにし先生は坐骨結節の位置を確認するまでもなくそう言うのである。以前日記で女性の骨盤の傾きを見た目で判断するのが難しい場合があると書いたが、相変わらず難しい。それはともかく、股関節がきれいに畳めることと股関節から屈曲動作をしているのとは違うのだなあとあらためて思った。柔らかい人は股関節を使わなくても前屈のような形がとれてしまうので、股関節を使うことを忘れているし、固い人(固めている人)は動かそうにも動かないので股関節を使わない。でも本当はからだが固いとか柔らかいということはなく、股関節から動くという習慣が無くなってしまっていることが問題なのである。「無くなってしまった」という表現をするのは赤ちゃんやこどもの頃には股関節をたくさん使っていたはずだからである。今回のセミナーでも柔らかい人が参加していたが、腰割りのポジションをとるのに骨盤をおこすのに苦労していた。もちろん固い人も苦労するのであるが、余分な動きをしない(できない?)分、運動の方向性を理解するのは早いかもしれない。

28.22回目の骨盤おこしセミナー2010年5月22日、23日

2010年5月22日、23日は22回目の骨盤おこしセミナーだった。いつにも増して個性的な人たちが参加して、大変おもしろいセミナーだった。ムエタイ、ヨガ、空手、自転車ライダー、お琴の奏者、ボルダラー、和太鼓奏者、ダンサー、卓球、治療家、スタイル良くしたい人、ただただからだが硬い人などなど。もちろん誰だってそれぞれの課題や問題を抱えていて個性的なのだけれど、特に印象的だったのがただただ硬い人。この人の希望は「普通の人みたいにエアロビをやってみたい」というのであった。つまりアップの体操からしてもう無理なのだそうだ。切実な問題である。ただその人は股関節が硬いのかというと、それ以前に股関節から動くということをやっていない、やり方がわからなくなっていた、ということなのであった。そのため骨盤おこし式立位体前屈や、腿裏を両腕で抱いての前屈運動をやっていくと、「普通の人」ぐらいに前屈ができるようになった。姿勢も猫背が解消され胸板が厚くなってしまった。もともと大きな人だった明らかに背が伸びた。これも猫背がかなりひどかったためだ。こういう大きな変化は、この人が「からだが硬い」と思い込んでいて運動をやってこなかったことも関係しているかもしれない。むしろ運動をやっている参加者の方が、あたらしい動き(股関節運動)に切り替えるのに苦労しているようだった。運動によって好ましくない動きを強化しているためだ。それでも「運動の方向性」さえ間違わなければ、根気よく取り組む事で変化していくだろう。この「運動の方向性」を知ることが、セミナー参加の意義のひとつである。これを間違えると一所懸命やるほどに、悪い癖がついてしまうことになる。空手の人が股割りトレーニングを諦めずに長時間(おそらく10分以上)取り組んでいたのもびっくりした。このトレーニングは大変厳しいので、途中で根を上げてしまう人がほとんどなのだ。えにし先生は「もっと押す、もっと押す」とけしかけて、「諦めたときが終わるとき」と言うが、なかなかそうはいかないのだ。骨 盤おこし式の股割りはフォームが厳密で崩してはいけないのだが、諦める以前に苦しくてそのフォームが崩れてきてしまう。そうなると「諦める」以前に続けて もからだに無理がかかってくる。えにし先生に言わせれば、このフォームの崩れ自体が「諦めたこと」になるのかもしれないが。この空手の人は、フォームもなんとか維持しつつ前屈し続けて、お腹が床に着くあたりまで持って行ってしまったのだから大したものだ。もう額から汗がしたたり落ちていたが。それに励まされて、この回では股割りに熱心にチャレンジする人が多数いた。きついのだが、目標がはっきりしているので挑戦しがいのあるトレーニングである。今回もいろいろ気付くことがあったが、それは次の日記で。

「胸をもっと動かす」

もう「その2」っていうのも間が抜けているのだが、まあ「その1」という日記を書いたので、一応「その2」っていうことで構造動作(骨盤おこし)トレーニングでのわたしの課題は「胸をもっと動かす」なのだが、前回のセミナーのときにえにし先生に「首のシワ」と胸の緊張の話をうかがって、目から鱗が落ちた。
骨盤立位のポジションでそこに胴体を乗せようとすると、腰椎で反ってしまいがちになる。もちろん腰椎は無理に反ってはいけない。ではどこで胴体が骨盤に乗ってくるのか、というとこれは胸椎のカーブが緩やかになることで上体が立ってくると構造動作では考える。現代人は胸椎の動き(と股関節の動き)が乏しくなっている。それを腰椎と頸椎の動きでカバーしようとするので、そこを無理して動かし過ぎ、故障を起こしている。そこで骨盤おこし運動と同時に必要なのが「胸割り運動」ということになる。これは股関節から胴体を前後に倒す運動と、胸椎の伸び縮みを組み合わせた動作である。
まあ胴体の前屈とともに胸をグッと押し出すという感じか。さて、この「胸を出す」というポジションは「首のシワが取れる」とセミナー初期からえにし先生が言っていて、それには多くの女性参加者の目の色が変わったことである(笑)。しかし今回このことが美容ということとは違うのだということがわかってびっくりした。首のシワは胸の縮み、腹の縮みと関係があるというのだ。縮むというのは力を入れて固めている、ということだ。胸を引き、腹を固めていると首に2本のくっきりとした深いシワが刻まれる。構造動作の求める姿勢は、胴体の前面の力を抜いた結果のものである。「胸割り」とは胸の力を抜くということである。わたしは腹圧をかけて腹を膨らませるのはけっこう得意な方だが、鳩尾を膨らませるのがまだまだ苦手だ。胸の力が抜けてくれば鳩尾も腹圧で膨らませる ことができる。さらに抜いて腹圧を上方に引き上げていけば肋骨が前に押し出されてきて、男なら胸板が厚くなる。女性だとバストアップする。腹は膨らむし、少しずつ胸も動いてきているように思っていたが、まだ首に2本のシワが残っている。もうがっかりである。しかし前面の筋肉の緊張をみるのに首のシワを目安にできるわけだ。立ち姿勢、座り姿勢でも首のシワが消えるポジションを探すようにしている。え にし先生は鏡が好きなのだけど、首のシワが力を抜いたポジションを教えてくれるとなると、なるほど鏡があると自分の姿を見てしまう気持ちがわかってきた。 これからは鏡に見とれているわたしを見つけても、トレーニングの真っ最中だと理解していただけるとありがたい(笑)。えにし先生がとっくにブログに書いていたのです。ちっとも理解していなかった! きっとまだまだ理解が足りない。

29. 【構造動作トレ】第一回のセミナー2010年6月26日、27日

毎度、毎度遅ればせながら……

【構造動作トレ】第一回のセミナー その1

2010年6月26日、27日は「骨盤おこしトレーニング」改め「構造動作トレーニング」の第一回セミナーが行われた。 これまで通り二日間、一回ずつのセミナーだが、今回からそれぞれ別テーマとした。構造動作の三大トレーニングは「腰割り」「立位体前屈」 「股割り」なのだが、中でも「股割り」は「キング・オブ・構造動作トレーニング」なのである。というのも股割りには「骨盤おこし(股関節)」「趾」「胸割 り」の各トレーニングが含まれ、そこに「腕のポジション」「頭のポジション」「腹圧」「関節のアソビ」「力を抜く」「連動伸張反射」など、構造動作の要素 が鍛錬できるからだろう。これらの要素は「腰割り」「立位体前屈」でも必要なのかもしれないが、「股割り」ではより端的に行えるので、丁寧にそれぞれの動作を追っていくことができると思われる。「股割りチャレンジセミナー」は、「開脚前屈」が苦手な人が短時間で床にべったりとお腹が付く方法を伝授するわけではない。運動のパフォーマンスを高めるための股関節の使い方を学ぶものである。だからからだが固いとか柔らかいとかは問題ではないのである。むしろ固い柔らかいの問題は別にある。えにし先生曰く、柔らかい人はいろいろ動けてしまうために股関節から前屈することが難しくなってしまう。固い人の方が股関節から動くという感覚を得やすい、というのである。固いわたしとしては本当にそうなのだろうか、と疑わないでもないが、ここは固くてラッキーということにしておこう。

【構造動作トレ】第一回のセミナー その2

えにし先生曰く、運動とは重心の移動である。しかし筋肉で動くと考える人が多く、力を入れすぎてからだを壊す。武術における「踏ん張らない」とか「地面を蹴らない」といった事柄は、このことと関係する。「居着く」とは筋肉による動作に陥ってしまうことだ。「不安定の使いこなし」とは、重心の移動による運動を行うことに他ならない。人間の日常における自然な動作が、武術にとっても有効なのは疑いがない。日常との違いはその精度や質はもちろん、いついかなる場でもそのように動けるかどうかである。しかし武術を学ぶ上で、日常動作の洗練が役立つのは間違いない。構造動作トレーニングは日常動作を洗練するためのものでもあるので、武術といわずあらゆるスポーツにも役に立つ。そして武術やスポーツといった非日常的空間での動きの錬磨がまた日常動作の洗練に拍車をかけるという、プラスのサイクルになることが望ましい。しかし多くの 武術・武道、スポーツの動作が構造動作からみると、筋力による運動に偏っているので、よほど自覚的に取り組まないとブラスのサイクルに持っていくのは難し い。まずは人間の運動の構造を知ることが大事で、構造動作トレーニングはそのための大きな力となるだろう。

30.第2回構造動作トレーニングセミナー2010年7月31日

第2回構造動作トレーニングセミナーで、えにし先生から「胸割り運動」の前段階のトレーニング方法が提案された。もっとも基本となる運動は、正座またはイスに腰掛けて股関節(ヒップジョイント)から胴体を倒すというシンプルなもの(「骨盤おこし前後運動」)である。「胸割り運動」はこれに胸椎の動きを付けて胸を出していく。しかしこれは胸椎の可動性が出てこないと、腰椎で反ってしまうことが多く、そうなると腰を痛める可能性がでてくる。実際には胸椎をちょっとずつ動かせばいいのだが、この「ちょっと動かす」が感じられるぐらいなら世話は無い。それがわからなから腰から動いてしまうわけだ。そこで今回の基礎トレーニングでえにし先生が紹介したのが顔の向きを変えない前後運動である。このやり方自体は以前のセミナーでもやっていたが、胸割り運動の前段階のトレーニングであるとはっきり言ったのは今回はじめて。まず骨盤立位の座り姿勢で、首にしわができない位置に頭を持ってくる。かといって顎を出しすぎて首の後ろに力が入ってはいけない。顎は出しすぎず引きすぎずがポイント。その頭の向きのまま空間を滑らすように前後運動をする。つまり顔だけはいつも正面を向いているようにするのである。このようにすると、腰が反ることを防ぎやすく股関節から屈曲するという感覚を養いやすい。これによって前後運動の方向性をしっかりからだが理解してから、胸割り運動に移行すると胸椎の動きがよりわかりやすいかもしれない。
(2008年7月23日・骨盤おこし初めての東京〜2010年7月31日まで)≫≫≫つづきは、中島章夫先生の日記・コラムでたまに構造動作関連の記事があります。

 

 

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