トレーニング中の怪我で末梢神経麻痺となった著者は、
どのようにして足の感覚を取り戻すことができたのか。
「深部感覚」から身体がよみがえる!
重力を正しく受けるリハビリ・トレーニング(晶文社)
著 中村考宏
【読者からのメッセージ】
深部感覚とは、意識されない感覚の流れ、体の位置、緊張、動きを無意識のうちに自動的に調節する感覚です。この感覚が鈍くなると、自分の体を思うようにコントロールできなくなっていくのです。
深部感覚(固有感覚)の障害は第3者がなかなか実感できるものではありません。
しかし、患者本人は絶望の淵より藁をもすがる気持ちで訴えています。
おそらく、日本だけでなく世界中に、この感覚を表現できずにいる人たちがたくさんいると思います。
たとえ末梢神経を損傷するほどの大怪我をしなかったとしても、ごくごく普通にみられる肩こりや腰痛といった筋骨格系疾患の症状でもこの感覚低下がみられます。
私は増加の一途をたどる国民病の予防にも大切な感覚だと確信しています。
深部感覚・固有感覚を理解するための1冊になるように一層の努力をしていきます。
中村考宏
五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)だけが感覚じゃない。運動に大切な三つの感覚重量覚・位置覚・運動覚をリハビリ・トレーニングするための、はじめての一冊。
「はじめに:壊れるからだ、治るからだ」
失われた脚の感覚を追い求めて
2004年11月のある夜、私は暗闇の中で「感覚の異常」という恐怖におびえていた。私の右脚は、私の意識に反応することなく、無意識と無の合間から、かつ ては私の脚だったことを忘れ去られまいと、もがき苦しみ、私の身と心にこれまでに経験がないほどの恐怖を投げつける。私の右脚は、私の右脚という形をし た、ただの肉の塊だった。……(本文より)
「深部感覚はカラダを認識する感覚」
もし、この感覚が鈍かったらカラダの各パーツのつ ながりが途切れていることにも気づかず、またカラダに無理をかけていることにも気づかないだろう。カラダがダルイ、重い、痛いという感覚は、何かを感知し てあなたに知らせている。深部感覚を研ぎ澄まし、「カラダの声」を受け取ることであなたの身体に変化が生まれてくる。……(本文より)
中村先生が、待望久しい新刊『「深部感覚」から身体がよみがえる!』(晶文社)を出版されましたが、私はこれをいの一番に購入し、一気に読了しました(とある事情により私の所有する本はレア物です)。
中村先生はすでにご著書を何冊も上梓されていますが、この本は、これまでの著書とはかなり違うたたずまいの、きわめて特別なものであるという印象をまず持ちました。というのも、そこにはこれまでなかったほど先生の個人的な体験についての記述が多かったからです。中村先生が右脚の深部感覚を失い、再びそれを取り戻すという経験をしたことが、「深部感覚トレーニング」が生まれるきっかけになったという記述があります。自分自身の辛い経験がなければ「深部感覚トレーニング」が今のような形で存在することはなかったわけで、その思いに導かれた先生の切実な探求がこの本に独特の緊張感をもたらし、その提言に真正さを与えているような気がします。
この本で扱われているトレーニングの中にはすでになじみのエクササイズもありますが、そこに「深部感覚」という筋が一本通ることによってトレーニングが体系化され、全体として非常に見晴らしのよいものになっていると思います。私は「深部感覚(固有感覚)」をさらに深く理解したいと考え、読みつけない生理学やら神経科学の本を何冊も斜め読みしましたが、「深部感覚(固有感覚)」の研究は日本ではあまり進んでいないようで、日本語で読める参考になる文献はそれほどありませんでした。そこで生来の凝り性が災いし、「固有感覚」を発見してその名付け親ともなったサー・チャールズ・シェリントンの著書『神経系の統合作用』(1906)から、さらには彼が感覚神経系器官としての筋紡錘に言及した「骨格筋神経の解剖学的組織について」(1894)という論文にまで手を出す羽目になりました。おかげさまで、「筋紡錘」だの「ゴルジ腱器官」だのという専門用語には多少詳しくなりましたが、難しい論文なのであまり理解は進んでいません。
著書の中で中村先生は、シェリントンを受け継いで、「深部感覚」とは「自分が動くことによって生じるカラダ内部の刺激を感知する感覚」だとおっしゃいます。その感覚を拾うことが重要であり、「感覚を拾うということは、自分のカラダのパーツを自分のものにし、自分の存在を確信するものであり、自分を知るための働きかけ」となるともおっしゃっています。
最近立て続けに怪我ををして(深部感覚がまだまだ鈍い!)、あまりトレーニングに進展が見られないのが情けないのですが、『「深部感覚」から身体がよみがえる!』を繰り返し読むことでその要諦をつかみ、自分のカラダの声に耳を傾けながら、たとえ亀の歩みのようであったとしても、深部感覚トレーニングを通して自分を知るために、一歩一歩前に進んでいきたいものだと思っています。
「深部感覚」を私流に例えるなら、家族のようにいつもそばにいて、失って初めてその大切さに気づくようなもの。
深部感覚を失った経験がないので「これが深部感覚」と認識することは難しいけど、私が私であるためには、とんでもなく大切な感覚なのかもしれないと思う。
写真は、深部感覚について学ばせていただいている中村 考宏先生の新刊『「深部感覚」から身体がよみがえる』
今朝amazonから届いたばかりホカホカ?(^^)
一昨日は中村考宏先生の朝日カルチャーセンター新宿で行われた深部感覚リハビリトレーニングの講座に参加した。写真の本で取り上げられているトレーニングの一部を体験できる内容だった。2年ちょっと前に中村先生から「次の本のテーマは深部感覚」というお話を伺っていたが、そのときは「深部感覚って何?」という感じだった。その後、中村先生の講座に参加する度に深部感覚について断片的な知識は増え、「これかなあ」という体感もうっすら得られようになったが、深部感覚の正体は相変わらずつかめなかった。ところが、いつだったか、先生がかつて誤ったトレーニングの結果、足の感覚を失ってしまったというお話を伺っているときに「そういうことか」と何かが府に落ちた。しかしながら、それを言葉で整理しようとすると上手くいかない。そういうわけで先生自身が整理した考えをまとめられた本が出版されるのを待ち焦がれていた。そして一昨日、講座会場で担当編集者さんみずからが手売りしていたこの本を購入。 その場で、「はじめに」の部分だけ読んでみる。あの話が載っている。ああ、やっぱりそういうことなんだなとさらに深いところに落ちた。単なるトレーニングの解説本だったら、たぶんぜったいに載せない話。それがわたしには一番読みたかったことである。2年待ってて良かった。
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