足が軽い、体が楽、など自分にとってプラスになる変化を重ねる

先月の朝日カルチャーセンター新宿教室「深部感覚リハビリトレーニング」講座に参加された方からメッセージを頂きました。

先月の新宿で深部感覚の講座でのご指導、有難うございました!あの時流れ星のようなものだと言われた感覚を本を読んで忘れないようにしてルーティンを繰り返して1ヶ月。身体の向き合い方や感覚が以前とは全く違うようになりました!

とてもいい感覚だと思います!深部感覚(固有感覚)を厚くするためには、指標となる機能的肢位(機能的姿勢)が強度と安定、さらに直ちに次の動作へ移ることができる位置を備えていることが大切です。きっとルーティーンの際の指標が定まっているのでしょう。

深部感覚を高める股割り

さて、先日の東京・股割りワークショップは少人数ではじめて参加の方たちと実習した。はじめての方は股関節の位置の確認からはじめなければならない。体が硬いとか、股関節を動かせない、というほとんどの方は、股関節の位置が曖昧になっている。股関節の位置が明確であれば最低限のコントロールは可能なはずである。

次に股関節の位置がわかっていても動かせない、という方は、お腹を腰椎椎間関節を動かすことに作用させている。お腹は股関節を動かすために腹圧の保持が必要。さらに足の末端が、趾を屈曲できない、足関節を底背屈できない、など股関節と連動できる状態にないことが多い。

これらは解剖学的肢位を基準に生活していることが体の所有、操作するという感覚を低下させているのではないかと思う。トレーニングの取り組み方は、怪我のリハビリ・治療のため、動作のパフォーマンスを上げるため、などそれぞれでしょう。自らの動きで生じる内部の刺激をキャッチする感度を高めることによりトレーニング効果はグングン上がります。

トレーニングの際は、変化を確認する習慣が大切です。

「入力−統合−出力」

「入力−統合」は股割り、スクワット、趾などのトレーニング動作をすることで内部環境に起っている流れです。
「出力」はそれによって生み出される動作の流れです。

機能的肢位(適切なポジション、運動方向など)を入力することにより、効率のよい動作が出力されます。足が軽い、体が楽、など自分にとってプラスになる変化を重ねていくことにより、深部感覚(固有感覚)を厚くし、目的を達成するための大きな力になるはずです。

新刊刊行2ヶ月、読者の声

7月の初めに「深部感覚」から身体がよみがえる!(晶文社)を刊行して2か月。この間に出版記念講座を東京と大阪で開講、パーソナルレッスンでも深部感覚(固有感覚)の紹介をしている。また、臨床におけるリハビリの質を高める会(構造動作研究会)では筋骨格系の解剖学的特徴と並行して深部感覚(固有感覚)の歴史的な背景から生理学の復習をしている。怪我を繰り返したり、怪我の予後が思わしくなくパフォーマンスが低下している場合などは、この深部感覚(固有感覚)が回復していないことが多い。 リハビリは怪我によって損傷した組織の修復ばかりでなく、それにともない故障した深部感覚(固有感覚)を回復することが大切なのです。

先日、内科のドクターから「生理学で深部感覚(固有感覚)を勉強したことはあるが、それを患者さんにどのようにアプローチしてよいか実感がわかない」というような相談を受けた。内科のクリニックでは内臓器の症状ばかりでなく筋肉や関節などの症状を訴える患者さんも多いそうで、専門外の整形外科学を勉強し徒手療法まで身に付けている内科のドクターもいるようだ。私はまず自身が深部感覚(固有感覚)を体感するようにすすめている。それは、いくら字面をおってみても、深部感覚を実感できない。自分の感覚に注意をむけ感覚を認識することが重要です。 患者の立場からすると、このような感覚を磨いている先生にかかれることはラッキーなことだと思います。 実はごくごく普通にみられる肩こりや腰痛といった筋骨格系疾患の症状でもこの感覚低下がみられ、増加の一途をたどる肩こりや腰痛など国民病の予防になる大切な感覚なのです。

さて、2ヶ月経ってようやく一般の方からも声が上がってきた。私もこの間にずいぶん紹介してきたが、反応が少ないので心配していた。当初、常連の方も新刊を読んで心配になったという。それは、そもそも深部感覚というよくわからないものを文章にして説明しているのだが、自分の感覚としてとらえれるようにならないと表現できないから、感覚としてとらえることができないと、よくわからないもので終わってしまうのではないか、ということだ。しかし、まじめにリハビリに取り組む方や感覚をとらえれる方たちからボツボツと意見をいただくようになってようやくスタートである。

大阪・NHK梅田教室で開講した「深部感覚リハビリトレーニング」講座では、腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・分離すべり症・坐骨神経痛・膝蓋骨複雑骨折の後遺症など、難治性の症状で困ってみえる方たちが症状の軽減、体が楽、体が軽いなどの変化を実感できた。

スポーツの指導者や選手からは、基本動作の反復練習や体のケアの方法について思いもよらない発見があったと意見をいただいた。「深部感覚リハビリトレーニング」で紹介しているアプローチは筋肉や関節の変化を求めるものではなく、固有感覚の活性化を図ることが目的になる。どうしたら基本動作が色濃く体に染み込むのか?足関節捻挫は何を回復させなければならないのか?これまで筋肉を強化、あるいは筋肉を柔軟にするためのアプローチをしてきた方がほとんど。「深部感覚リハビリトレーニング」は実際の動作に関わる体性神経(運動神経・知覚神経)の流れを滞りなく促通させるための考えに基づいているから、それに気づくことができる感覚の持ち主には新鮮なのかもしれない。

とはいえ、実際のところ「深部感覚」と聞いてもよくわからない方が多いと思う。まずは必要としている方たちに届くように引き続き紹介していきます。

子供に機能的姿勢を身に付けさせる/深部感覚(固有感覚)

夏休みを利用してあるご家族のグループレッスンをした。
ご両親と3人の子供さんの5人家族。
もともとスポーツに取り組まれているお子さんが

できるだけ怪我をしないこと、
ぎこちなく感じる動作が滑らかになること、
これらを解決できる体づくりを指導してほしい。

ということだった。

ご主人は趣味のスポーツで体を動かしているが昔から体の硬いことがネック。
奥さんは下の子がまだ小さいので子育てに追われ持病の腰痛がきつい。
上のお子さんはスポーツに取り組んでいてご主人と同様に身体が硬く、キレのある動作ができない。
真ん中のお子さんは音楽に取り組んでいて猫背の姿勢が気になる。
ということで、ご家族でレッスンをうけることになった。

はじめは機能的姿勢のレッスン。

機能的姿勢は、強く、安定、ただちに次の動作へ移ることができる姿勢。

つづいてその姿勢が強さと安定を増すために

四肢と体幹の位置をレッスン。

そしてメインは股関節動作のレッスン。

機能的姿勢は立位、座位、腰を落として低くしゃがむ、
どのような姿勢に変化したとしても
強さ、安定、だだちに次の動作へ移ることができる、という3ポイントを備えていること。
この3ポイントを備えることで腰の入った動作が可能になる。

股関節が滑らかに可動するための基本動作をレッスン。

1、腰を落とす

 

2、軸足でバランスを取る

 

3、体幹をスイングする

以上をレッスンした。

お子さんの猫背姿勢が気になるが、どのような姿勢、どうやって姿勢を改善してよいか、わからない、という相談も多い。
私自身も自分の子供に対してずいぶん考えてきた。
おそらく何が正しいかということではなく、お子さんたちにどのように育っていってほしいか、ということが大切だと思う。
私は健康で元気に育っていってほしいと考えているので自分の子供たちには機能的姿勢が身に付くようふだんから気をつけている。

無重力と重力の深部感覚/宇宙飛行士の体の変化から得られること

私は12年前の大怪我で言葉にならない不思議な体験をした。これはミクロコスモス(小宇宙)体験というと何となくかっこいい。宇宙飛行士さんの本物の宇宙体験とは違うけれど私はそのように理解している。マクロコスモス(大宇宙)はロケットにのって地球を飛び出さなければ体験できないが、ミクロコスモス(小宇宙)ならいつも自分の中にあるものと思うようになった。九死に一生を得るような体験をされて人生観が変わったという方などは、ミクロコスモス(小宇宙)を体験したのではないかと解釈している。

宇宙飛行士さんの中には宇宙から青い地球をみて人生観が変わるという。人類が宇宙に飛び出して50年くらいになるのだろうか。過酷な努力の結果が一握りの人間に青い地球という人生観を与える。彼らのおかげで地球に住む私たちのものの見方にも大きな指標になっているのだと思う。

地球には重力が働いて二足歩行の人類には負担になっているという考え方がある。しかし、無重力という環境はそれ以上に過酷なのではないだろうか。無重力環境では体液の流れの変化、骨筋の衰え、など人の体に様々な変化が起こる。それ故に宇宙飛行士は地上にいるときよりも入念な体調管理がなされている。それでも地球に帰還したときには二本の足で立てないほどに衰えたかのように見える。重力の負担から解放されたいと思っている方はどうなってしまうのだろうか。

地球上の生物は重力下において進化してきた。私たち人間の体も重力下で生活を営むための設計がされているのだと思う。重力という適度な刺激があるからこそ私たちは二足歩行で生活を営むことができる。これができなくなったときに私たちは地球に引かれて土に帰るのではないか。

無重力環境に適応するということは地球人から宇宙人に進化するということなのかもしれない。しかし、本当のところ私たち人類は重力環境についてまだよくわかってない。中には重力の大きさを知る感覚(深部感覚・固有感覚)が鋭い人もいると思うが、そのほとんどは深部感覚を覚醒できないか、鈍らせている。人類が無重力環境という体験を重ねていくことで重力環境についての理解が深まっていくのかもしれない。

無重力環境では深部感覚の重量覚が必要なくなる。おそらく四肢の位置覚や運動覚などもさほど必要がなくなるのではないかと思う。地上における姿勢制御は視覚、前庭感覚、深部感覚などにより調節されている。重力環境ではこれら深部感覚(固有感覚)がなければ二足歩行で快適に生活を営むことができくなるだろう。

筋肉を強化することを目的にウエイトトレーニングに集中しすぎバランス感覚を鈍らせている方がある。重力を受けているという感覚があまりないのかもしれない。構造動作トレーニングでは重力を骨格で無理なく受けるため骨の強度を最大限に活かしたいと考えている。骨が体を支えるという本来の役割を果たすことで、筋肉は骨格の位置や運動の調整などパワーばかりでなく繊細な動きまで幅広い役割を担うことができる。筋肉をパワーに偏らせてしまうとバランス感覚を鈍らせる原因となると考えられる。

また、バランス感覚は視覚、前庭感覚、深部感覚などの姿勢制御がその精度の元にある。姿勢は「安定」「強度」「ただちに次の動作へ移ることができる」の3つのポイントを備えた骨格と重力の方向を体に染み込ませることで深部感覚(固有感覚)が高まる。バランス感覚は視覚、前庭感覚が注目されるが、深部感覚は欠かせないのだ。

無重力の体の変化は重力がヒトの体にとって必要不可欠であることを示唆しているのではないだろうか。

大腸がんから学ぶ骨盤の深部感覚/便秘は万病のもと

先日、大腸がんの方のCT画像や内視鏡画像と姿勢を見くらべる機会があった。そのことがあって、お腹と骨盤の位置が気になってしょうがない今日この頃。大腸がんの方ばかりでなく、お通じが3〜5日に1回という方の話をうかがうことが多い。便秘は万病のもとともいわれます。股関節を滑らかに動かすことができるようにすることと同様に内臓器のスペースを確保して腹圧のかかる状態で体の中の通りをよくしたいものです。

さて、女性クラスの方たちと深部感覚の練習をしました。母趾球が靴にあたって痛いという方の接地をみてみると親指を立てすぎていました。自分がいいと思ってやっていることが違っていたということはよくあります。このような機会は自分がやっていることを見直すのに最適です。

深部感覚は自分と向き合うことでしか向上しない。自分の動きによって生じる内部環境の刺激を感知し感覚を認識して知覚にする。自分はどこにあるのか、自分はどの位置にあればよいのか。深部感覚は解剖学的肢位の基準ではなく、機能的肢位に体をセッティングします。機能的肢位は「安定」「強さ」「ただちに次の動作へ移ることが可能」の3つが備わった姿勢です。骨盤とお腹の位置も機能的肢位にセッティングします。

腹圧がかかれば、股関節が滑らかに動く、
股関節が滑らかに動いていれば、腹圧がかかっている。

腹圧とはどのようなことなのか?一般の方が腹圧を理解するのは難しいことだと思います。私が股割りを実践している理由の一つに股関節と腹圧の関係を明解にしておきたいということがあります。腹圧については専門家の間でも様々な考えがありますので、身をもって腹圧を実感することで迷いがなくなります。

今は医療技術の進歩で大腸がん治療の予後も格段に良くなっているそうです。しかし、病巣を取り除いたからといって便秘の習慣が改善されるわけでもありません。さらに手術後は腹部の傷跡が縮み腹圧低下とともに股関節の可動も鈍ります。私は腹圧と股関節の可動、この両方が矛盾なく向上するリハビリをめざして深部感覚を高めていきたいと思います。

この日は腹圧を高めるための脊柱の深部感覚ワークを練習しました。適度な運動や繊維の多い食品などで頑固な便秘を解消するのが難しいように、腹圧を高めるということも簡単なことではありません。一人では難しい腹圧のワークもペアワークを行なうことにより、第3者のアドバイスを受けつつ自分と向き合うきっかけができ、深部感覚を高める近道になると思います。

 

 

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